トランザクションの今昔物語

企業間取引技術やシステムの60年--電算化に始まる接続の変化

石橋正彦

2017-10-24 06:00

 企業間取引にまつわる技術やシステムは、今後10年でどう変わるのか。電算化、オンライン化からインターネット普及、ウェブ技術の台頭を経て、専用線からIPベースのトランザクションが拡大した歴史を振り返りながら、リスクや採算、取引を保証するトランザクションが期待される近未来を読み解く。企業間取引を実施している管理者や利用者が知っておくべき今後の動向とイノベーションをもたらすテクノロジとは何か――。

黎明期(金融オンライン化の時代:1970~1990年代)

 現在40~50代の読者が新卒入社された時代は、ちょうど汎用機からオープン系に代わり、2400bps程度の細い専用線から64kbpsのISDNに代わった。現在ではTCP/IPのインターネットで企業間取引ができる時代だが、まずは企業間取引60年における変遷から技術革新を振り返ってみたい。

 図1は、1970年代から2030年に向けた企業間取引60年の変遷である。1970年代は、当時の三菱銀行や富士銀行などの都市銀行を中心に、為替のバッチ処理(預為)を中心としたいわゆる「第1次オンライン」が開始された。当時の汎用機は、ホストとカードパンチでバッチ処理をし、各都市銀行間で処理速度の競い合いはまだ無かった平和な時代である。

 しかし、第1次オンラインから徐々に汎用機のテクノロジが進化し、金融窓口端末やATM/キャッシュディスペンサなどの専用機器が登場、顧客(利用者)側が処理速度を肌で感じる時代が到来した。これが、いわゆる「第2次オンライン」である。その当時のATMでは、「1件あたりの現金の引き出しから通帳印刷までの処理速度」が、当時の銀行の“看板”であり、序列をもたらし、差別化でもあった。

 一方、初期の企業間取引の開始としては、1973年当時の太陽銀行と神戸銀行の合併に伴う「日本UNIVACと富士通(FACOM)」間のリレーマシンを介した相互接続などが挙げられる。この頃は、OSが異なる異機種の汎用機を接続し、オンライン処理をする事例があまりなかった(この後の金融機関の合併や統合からは、あたり前のように事例として登場して来る)。

 当時の2つのシステムの接続では、あらかじめ別の企業として「企業間取引」をし、(本番が延期するかもしれない)移行日を皮切りに、どちらかの企業側のシステムに片寄せする「初期の企業間取引」があった。

図1
図1 2030年に向けた企業間取引60年の変遷(第1次オンから2020年五輪特需以降)、出典:サイバー研究所(2017年10月)

 また、1973年に全国銀行データ通信システム(全銀システム)が稼働し、「全銀手順」(全銀協標準プロトコルを独自に策定)が作られた。その後、1983年には、全銀手順(ベーシック手順、コンピュータ業界でスタンダードだったBSC手順に準拠したプロトコル)にアップグレードされ、通信速度がアナログ回線では2400bps、ISDN回線を利用すれば64kbpsまでカバーできる本格的な企業間取引が開始された。

 このような技術やシステム、ネットワークを利用した企業間取引をトランザクションという処理にまで落とした際に、どのような構成になるのであろうか。

 次項の図2~5は、企業間取引の接続の4パターンを定義したものである。先ほどの太陽銀行と神戸銀行の接続は1対1を前提とするが、正確には中間にリレーマシンを採用しているため、「リレー型」になる。それでは、各4パターンのトランザクションの構成はどのようなものか。

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