本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、トレンドマイクロの大三川彰彦 取締役副社長と、ソースネクストの松田憲幸 代表取締役社長の発言を紹介する。
「パートナーとの協業でIoT環境に必要なセキュリティを全て提供する」
(トレンドマイクロ 大三川彰彦 取締役副社長)

トレンドマイクロの大三川彰彦 取締役副社長
トレンドマイクロが先頃、IoT(モノのインターネット)向けセキュリティ戦略を発表した。大三川氏の冒頭の発言はその発表会見で、IoT向けセキュリティ事業への意気込みを語ったものである。
会見の全容は関連記事を参照いただくとして、ここでは大三川氏の話で筆者が注目した点を取り上げたい。同氏によると、トレンドマイクロではIoTシステムの構成要素を「デバイス」「ネットワーク」「コントロールセンター」「データアナライザ」の4つのレイヤーとして捉え、この全レイヤーを対象に業種ごとに最適化したトータルセキュリティを提供していく構えだ。その上で次のように説明した。
「IoT環境ではこれらの各レイヤーをまたいでデータが活用されている。IoTデバイスから収集されたデータはネットワークを通じてクラウドに蓄積され、クラウド上に蓄積された膨大なビッグデータは人工知能(AI)を用いて分析され、意味のある情報に変わる。その後、用途に応じて各デバイスに指示が送られ、それに従って各デバイスでアクションが起こる。このようなレイヤー間を移動するデータをわれわれは適切に守っていく必要がある」
こうした中で、同氏はIoT環境に必要なセキュリティとして、4つのレイヤーに基づいた図を示した。キーとなるセキュリティ機能は「認証」「プライバシー」「脅威対策」で、それぞれに4つのレイヤーに必要な機能を記してある。興味深い図である。

図:IoT環境に必要なセキュリティ
同氏によると、この図の中でトレンドマイクロ自体が手掛けるのは脅威対策で、認証とプライバシーについては「この領域を手掛けるパートナー企業との協業によって、トータルソリューションとして提供していきたい」と話した。
パートナーとの協業については「当社が最も強みとするところ」とし、クラウドベンダーをはじめ、キャリア、システムインテグレーター、通信機器ベンダーなど、長年にわたってパートナーシップを組んできた実績を強調。その流れで語ったのが、冒頭の発言である。
同氏が言うように、トレンドマイクロのようなセキュリティ専業ベンダーがIoT向けセキュリティを推進していくためには、パートナーとの協業が不可欠だ。とりわけ、クラウドベンダーやキャリアとどのような連携を図っていくか、注目しておきたい。