矢野経済研究所は10月27日、スマート農業に関する調査結果を発表した。2016年度の国内市場規模は104億2000万円で前年度比107.2%増。2023年度には333億3900万円規模に成長すると予測する。
スマート農業とは、従来の農業技術と情報通信技術を掛け合わせることで、生産の効率化や農作物の高付加価値化を目指すものと定義する。農業の生産から販売に至る幅広い領域に情報通信技術を取り入れ、高い農業生産性やコスト削減、食や労働の安全などを実現する。
矢野経済研究所では、スマート農業市場を(1)栽培支援ソリューション(農業クラウド、複合環境制御装置、畜産向け生産支援ソリューション)、(2)販売支援ソリューション、(3)経営支援ソリューション、(4)精密農業(GPSガイダンスシステム、自動操舵装置、車両型ロボットシステム)、(5)農業用ロボット――の5つの領域に分けて事業者の売上高を基に市場規模を算出している。農業向けPOSシステム、農機などのハードウェア、農業用ドローンなどは含まれていないとしている。
2016年度の内訳は、栽培支援ソリューションが34億7200万円(農業クラウド:13億7800万円、複合環境制御装置:16億5800万円、畜産向け生産支援ソリューション:4億3600万円)、販売支援ソリューションが9億9600万円、経営支援ソリューションが21億円、精密農業が36億5600万円(GPSガイダンスシステム:10億3500万円、自動操舵装置:26億2000万円)、農業用ロボットが1億9600万円だった。
スマート農業国内市場規模推移と予測(出典:矢野経済研究所)
「農業クラウドの導入により、農業のIT化が進めば、経験と勘により培われたベテラン農家のノウハウをデータ化し、蓄積することができる。新規就農者や新規参入企業でも、栽培ノウハウの継承が容易になることが期待される」(矢野経済研究所)
販売支援ソリューションについては、農作物の仕入から原料および加工品の在庫管理、受注・出荷・売上管理など農産物の加工販売を行う業務をクラウド上で管理し、生産者または農業協同組合(JA)と食品関連事業者との間での需給マッチングを行うものと説明。生産者とJAでは農作物の防除履歴など生産履歴をやり取りしており、こうした業務全体の効率化につなげることが可能になるとしている。
矢野経済研究所によると、2017年度頃までは農業クラウド、複合環境制御装置、畜産向け生産支援ソリューションなどの栽培支援ソリューションがけん引。2018年度以降は、業務効率化を実現する販売支援や経営支援ソリューション、農機の無人運転を実現する精密農業システムなどが成長すると見込む。
一方、スマート農業が普及するためには、農業機械における情報通信プロトコルの共通化と標準化が重要となる。「さまざまなデータを共有・活用できる『農業データ連携基盤』が2017年度から立ち上り、スマート農業に関するあらゆるデータの共有化が進展している」(矢野経済研究所)