古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」

歴史を変える「The Machine」の価値 - (page 2)

古賀政純(日本ヒューレットパッカード)

2018-01-18 07:30

「メモリ主導型コンピューターを目指すHPE」

 データ爆発時代を企業や組織体が勝ち抜くためには、なんとしても高速なコンピュータが必要です。現在とは比べ物にならない高度な処理をより小型のコンピュータで実現しなければなりません。しかし、先に述べたとおり、並列処理のために大量のコンピュータを導入すると、現在の仕組みでは、設置スペースの利用料や電気代がかかります。

 この状況を打開するためには、現在のものとは全く異なる構造のコンピュータを考えなければなりません。では、現在のものと全く異なる構造のコンピュータとは、どのようなものでしょうか。 さまざまな次世代コンピュータの仕組みが研究されていますが、その一つとして挙げられるのが、1940年代から2017年現在も基本原理が変わらないCPU主導型コンピュータからの脱却です。CPU主導型コンピュータは、主にCPUの能力に強く依存する構造になっています。CPUに比べるとメモリや低速なハードディスクなどの記憶装置が階層化されており、この階層化された記憶装置とCPU主導の構造は、コンピュータ全体の速度を低下させる要因を内包しています。

 また、現在のコンピュータは、CPUの近くにあるデータは高速に処理できるものの、ほかのCPUにあるデータを別のCPUで処理しようとすると、データの取得と処理に時間がかかるといった問題もあります。

 これらは、現在のコンピュータの宿命ともいえますが、階層化された記憶装置とCPUが接続された構造を変革しないかぎり、この問題を解消することはできません。近い将来、CPUの性能向上がこれ以上期待できないとなると、そのCPU依存の構造を変えなければなりませんし、さらに速度を低下させる要因となっている記憶装置とのデータの伝送の仕組みも変えなければなりません。ならば、いっそのこと「CPUの能力に強く依存し、階層化された記憶装置を持つCPU主導型コンピュータ」から脱却し、「全く新しい仕組みのコンピュータ」を作ろう、それが、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)が開発中のThe Machineです。

CPU主導型コンピュータからの脱却に挑戦するHPE
CPU主導型コンピュータからの脱却に挑戦するHPE

60年以上変わらないコンピュータの歴史を変えるThe Machine

 HPEが開発中のThe Machineは、どのような構造になっているのでしょうか。The Machineは、ノイマン型コンピューターから完全に脱却した構造というわけではありませんが、CPUと階層化された記憶装置の組み合わせという従来のCPU主導型の構造ではなく、メモリ中心の構造になっています。メモリ中心の構造とは、データを格納する巨大なメモリ空間を中心に据え、その周りに用途ごとに特化したさまざまなプロセッサ(データの処理装置、人間でいう脳)を接続する構造です。

 データ爆発時代は、人工知能を持つコンピュータや、IoT機器、家電、自動車、住宅などが密接に連携する社会です。それらの機器の連携を滞りなく行うには、取り扱うさまざまな種類のデータを1つの巨大なメモリ領域に確保し、すぐに処理できる必要があります。人工知能の処理が必要になれば人工知能の得意なプロセッサ(GPUなど)がメモリ上のデータを処理し、信号処理が必要になれば信号処理用のプロセッサが処理を行います。メモリ上に保管されたビッグデータを中心に考える「用途ごとに変身するマシン」と言っても過言ではないでしょう。


CPU中心のコンピュータからメモリ中心のコンピュータへ

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]