海外コメンタリー

第4次産業革命の波とIT職種の未来 - (page 2)

Charles McLellan (ZDNet UK) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2017-12-13 06:30

 同レポートの主な調査結果によると、「余剰人員の解雇や、自動化、中間業者の排除によって、事務職や管理職でかつてないほどの規模の大きな職の消失が発生する」結果、15の先進国や新興国、地域で最高710万の職が失われるという。その一方で「アーキテクチャ関連やエンジニアリング関連」と、「コンピュータや数学」といった分野で210万の新たな職が生み出されると予測されているため、最終的にはおよそ500万の職が失われることになるという。


提供:世界経済フォーラム(2016年に発表された「The Future of Jobs」レポートより)

 WEFのレポートは、雇用需要が高まると予測されている業界(例えば情報通信技術(ICT)業界)であっても、「既存のさまざまな役割をまたがって同時多発的に起こるスキル供給の不安定さによってもたらされる、スペシャリスト雇用の難しさ」もあいまって、困難な状況が発生するようになると警告している。

 現時点で雇用されている従業員たちにとって幸運なことに、WEFの調査では、将来的な労働力に関する戦略で最優先とされていたのが、スキルの再構築に向けた投資であり、全回答者のうち65%がこの戦略を採用していると答えている。次に多く挙げられているのは、「機動性とジョブローテーションのサポート」で39%だ。

 米政府によって2016年12月に公開されたレポート(オバマ政権時代における最後のレポートの1つ)「Artificial Intelligence, Automation, and the Economy」(AIと自動化、経済)では、AIと自動化、経済が分析されており、「研究者らの推定によると、次の10〜20年で9〜47%の職が脅かされる」と記されるとともに、「調査結果では、自動化によって脅かされる職は、高いスキルを要さず、教育水準の低い作業員でも可能な低賃金のものに集中している」と記されている。つまり、自動化はこういった作業員に対する需要を引き下げ続ける結果、賃金を引き下げるプレッシャーを与えるとともに、格差の拡大に向けたプレッシャーを与えるという。

 同レポートではその一方で、「AIの開発や監督といった分野での新たな職が直接的な結果として生み出されるとともに、(AI関連の仕事に就いている人々の)所得の上昇によって需要が拡大した経済活動を通じて、新たな職がさまざまな分野で間接的な結果として生み出されるだろう」と認めている。

 同レポートは、AIの採用による自動化がもたらす米国経済全体への影響に取り組んでいくうえでの主な戦略を3つ提示している。それらは「AIがもたらすさまざまな利益のために投資し、開発していく」と「未来の仕事に向け、国民に対する教育と訓練を実践する」「過渡期の作業員に手を差し伸べるとともに、成長を広範に共有するための力を与える」だ。

米国第一主義と英国のEU離脱がもたらすもの

 このところ大西洋の西岸と東岸の両方でポピュリストによるナショナリズムが台頭してきているが、先に引用したレポートはそれ以前に作成されたものだ。このため、Donald Trump大統領が推進している「米国第一主義」や、英国の欧州連合(EU)離脱(2019年3月29日に予定されている)に向けての困難な道のりがビジネスモデルや労働市場にもたらす影響は織り込まれていない。しかし、政治におけるこの種の展開が従来型の業界における雇用の喪失と、格差の拡大に対する反応であった点を考えると、早急に何らかの手が打たれない限り、テクノロジに端を発する失業問題がこれらの国をはじめとするさまざまな国々の状況をさらに悪化させることは避けられないだろう。

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