RPA活用の盛り上がりは本物?--アビームが示す本格導入への“処方箋”

藤本和彦 (編集部)

2017-12-11 15:01

 アビームコンサルティングは12月7日、ソフトウェアロボットによる業務の自動化を指す「RPA(Robotic Process Automation)」に関する報道関係者向け説明会を開催した。最新のRPA導入動向や導入事例、先進企業が抱える悩みとそれに対する対処方法などを明らかにした。

 アビームコンサルティング、日本RPA協会、RPAテクノロジーズの3社は共同で、国内企業におけるRPAの導入動向を調査(2017年7~9月末)した。2017年1~6月の前回調査に続き、今回は2回目となる。

 調査結果によると、RPAの導入件数(50件/月)は、前回調査(35件/月)よりも速いスピードで増加しており、このままのペースで導入が続けば、2018年末には累積件数で1000件を超える見通しだ。

RPA導入件数の推移
RPA導入件数の推移

 RPAの導入は幅広い業種で進み、「日本企業の業種構成に類して拡大」(アビームコンサルティング 戦略ビジネスユニット 執行役員 プリンシパル 安部慶喜氏)している。前回は金融業やサービス業での先行導入が見られたが、今回はメーカーでの導入が拡大。7~9月分の導入企業の内訳では実に42%をメーカーが占める結果となった。

 RPAの問い合わせと導入については、企業規模の裾野が広がったと分析する。前回は500億円以上の企業の問い合わせ・導入(47%・69%)が多かった。今回も同様の傾向だが、500億円未満の企業からの問い合わせが増加(62%)するとともに、100億~500億円の企業の導入が増加した。

 RPAは短期間での導入が増加し、高い削減効果を実現することが可能だと分かった。具体的には、前回と同様にRPA導入企業の96%が5割以上の業務工数を削減したと回答。RPAの導入を4週間以内に完了した企業は、前回の5割から8割に増加した。これについては「導入事例などにより具体的な導入方法が広がりつつあるためだと思われる」(安部氏)と指摘する。

RPA導入による削減効果
RPA導入による削減効果

RPA活用で先行する3つの導入事例

 同社が導入を支援した先進事例が紹介された。(1)OCR(光学文字認識)と連携した紙処理の効率化、(2)ビッグデータの自動収集・登録の実現、(3)RPAで海外現地法人の課題解決――の3つである。

 (1)は、OCRとRPAを組み合わせて紙からシステムへの転記作業とその後の一連の処理を自動化した事例だ。ある商社では、売掛金の消し込み処理を全て手作業で行っていたため、処理工数がかかっていた。その一連の処理をロボットに代行させることで業務を省力化した。

 まず、郵送されてきた支払明細書を複合機に読み込ませてPDF化する。以降で人手は介在せず、OCR読み取り、掛金消込、完了通知といった作業は全てロボットが自動で処理する。「ロボットの作成した掛金消込結果を、担当者が最終確認しているが今のところトラブルは起きていない」(安部氏)

OCRと連携した紙処理の効率化
OCRと連携した紙処理の効率化

 (2)はエンターテインメント業でのRPA導入だ。天気情報やチケット販売状況といった情報を収集し、社内システムに登録する作業を自動化した。これまでは1日前のデータを収集していたが、1日に複数回実施できるようになった。

 そうして集まったビッグデータを使って、企画部では物販戦略や天気と客数の関係分析、チケットの種類検討など、イベントの集客向上につながる施策をタイムリーに展開できるようになった。

ビッグデータの自動収集・登録の実現
ビッグデータの自動収集・登録の実現

 (3)RPAで海外現地法人の課題を解決した事例だ。とある企業の中国現地法人では、販売戦略立案のための競合情報収集と集計作業をRPAで自動化した。これまで人手で20日を費やしていた業務を1日に短縮した。これにより戦略立案のサイクルを短期化した。

 「20人が10日かけてデータを収集し、さらに10日かけてデータを集計していた。このデータを使って販売戦略や商品企画などを立案していた。海外現地法人で人手も少なく、年に1回から2回の作業が精一杯だった。これをロボットで自動化し、1日で作業を完了するようになった。戦略立案を月次のサイクルで回せるようになった。人間の処理をロボットが肩代わりするといったレベルではない」(安部氏)

RPAで海外現地法人の課題解決
RPAで海外現地法人の課題解決

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