「日本企業にデジタルマーケティング革命を」
Sitecore XPの中身は図1のようになっている。ポイントは、ウェブなどのマルチチャネルの裏にデジタル体験を演出する基盤があり、またその裏に単一のエクスペリエンスデータベースがあるという構造になっていることだ。さらに、他のCRMなどとの連携を可能にした「Sitecore xConnect」や、機械学習エンジン「Sitecore Cortex」といった機能もこのほど拡充した。
酒井氏によると、デジタルマーケティングを実現するウェブコンテンツ管理ソフトウェアとして、これだけの機能をオールインワンパッケージで提供していることが、Sitecore XPの最大の差別化ポイントだという。
ちなみに、Gartnerが毎年公表しているウェブコンテンツ管理ソフトウェア分野のマジッククアドラントでも、Sitecoreは2017年まで8年連続で「リーダー」として最高位をキープしており、この分野のリーディングカンパニーであることは明らかだ。
ただ、ここまで酒井氏の話を聞いても、筆者にはまだ腑に落ちない点があった。それは、Sitecore XPならではの魅力とは何なのか、今ひとつ捉えることができていなかったからだ。そこで、同氏にSitecore XPの成り立ちを聞いてみた。すると、図2のような方程式が出てきた。この方程式は、コペンハーゲン大学の出身者5人で設立されたSitecoreの創業者が考案したものだという。
その意味を説明すると、「know」は「個々の顧客を知る・理解する」、「shape」は「形づくる・演出する」。この2つを足し合わせたものに、大量のデータによる「scale」と「realtime」な処理を掛け合わせることで、「Own the Experience」、つまり「エクスペリエンスを獲得できる」というわけだ。
酒井氏から繰り返し手ほどきを受けたにもかかわらず、つたない説明でご容赦いただきたいが、言わんとすることは読者諸氏にも伝わったと信じたい。ここで出てきたknow、shape、scale、realtimeは、いわばSitecore XPの機能であり、特長だ。そして、それらによって生み出されるのが、ユーザー企業の顧客に対するエクスペリエンスというわけだ。これこそが、Sitecoreが生み出したデジタルマーケティングにおける「勝利の方程式」であり、Sitecore XPの魅力を物語っているものである。この方程式に、Sitecoreのソリューションの深みを感じさせられた。
最後に、今後の事業展開に向けての意気込みを聞くと、酒井氏は次のように答えた。
「日本では現在、100社を超えるお客様に当社のソリューションを利用していただいているが、ポテンシャルはまだまだ大きいと実感している。この分野は海外に比べて日本が大きく後れており、このままでは日本企業の競争力がますます失われるとの強い危機感を抱いている。それに対するソリューションを提供している立場として、ぜひとも日本企業にデジタルマーケティング革命をもたらし、強力に後押ししていきたいと考えている」
取材を終えて筆者が思ったのは、Sitecore XPの魅力を分かりやすく言うと、AppleやAmazon.comが提供しているカスタマーエクスペリエンスに匹敵するソリューションではないかと。エクスペリエンスは「体験」と訳されるが、そこに「感動」が伴うかどうかが勘所だ。前述した勝利の方程式にその気概を感じた。同社の今後の躍進に注目しておきたい。

図2・デジタルマーケティングの「勝利の方程式」(出典:サイトコアの資料)