「RPAによる業務改革」成功の秘訣(1)--導入段階で注意すべき3つの論点

金弘潤一郎 (アビームコンサルティング)

2018-02-06 07:00

 RPA(Robotic Process Automation)という手法が日本で注目されるようになってまだ2年弱だが、今やRPAというキーワードを目にしない日はない。企業の生産性向上、働き方改革の切り札と目されているのではないだろうか。

 アビームコンサルティングは、RPAにいち早く着目し、日本企業のRPAへの取り組みを支援してきた。RPAの持つ力を十分に引き出し、根本的な企業体質の変革と飛躍的な生産性向上に結び付けることに成功する企業も出てきている。本連載では、RPAに興味を持ち今後導入に取り組まれる方々にアビームコンサルティングが得た成功のポイントを伝えていきたい。

1.RPAの概要

 RPAについて全く知らないという読者はいないかもしれない。一方で、RPAの本質は何なのか、従来型のITと何が違うのかという質問は今でも多くある。

 技術的な側面で言えば、中核の技術は「画面認識」である。PCの画面に表示されているシステムの入力画面やウェブサイトを直接プログラムが認識することにより、あたかも人がPCに向かって仕事をしているのと同様に、さまざまな既存の仕組みを使って自動的に仕事を再現できる。もう一つの核といえるのが、レコーディングと呼ばれる開発機能で、高度なプログラミング技能がなくてもロボットプログラムを作成することができる。

 では、なぜこれほどまでにRPAが注目されるのか。RPAは従来型のシステム開発やパッケージ導入に比べて相当安価な初期投資(200~300万円程度)で活用を始められるため、従来のIT手法では費用対効果が見合わないと目されていた多くの細かい業務の自動化にも幅広く適用できるからだ。しかも、画面認識を使うため既存のシステムや電子メールなどと簡単に連携でき、適用範囲に制限がない。

 定型的な業務を広範に洗い出し、RPAの特性を生かして網羅的に定型業務の自動化を行えば、実に大きな生産性向上が見込めるのである。

2.日本におけるRPA導入の状況

 アビームコンサルティングが日本RPA協会と最近行った調査では、多くの導入企業で早期に大きな効果ことが明らかになった。

調査結果 ※クリックすると拡大画像が見られます

 まず、RPAを導入した企業のうち95%以上の企業が、対象とした業務の5割以上のロボットによる自動化を実現していることが分かった。既に多くの企業で効果を享受していることが見て取れる。

 また、それらの中の約8割が、RPA導入の着手から最初のロボットが稼動するまでの期間を1カ月以内としており、スピード感のある導入を進めていることが見て取れる。

 今後もこの様な傾向は続くものと考えられ、RPAに取り組む企業と、座視する企業の間では生産性の格差が生まれる可能性が強い。

3.RPA化推進のステップ

 RPAの導入を進める場合まずトライアルを行い、効果確認をした上で、全社的に広める本格導入の活動を立上げ、最終的に運用定着化を図っていくというステップを取るのが通例だ。

RPA定着のステップ

 RPAは、前述の通り、従来型のシステム構築に比べると初期投資が少額から始められ、柔軟に規模拡大ができるため、この様に段階的にリスクを抑えながら導入を進めることが理に適っている。

 多くの企業がRPA導入に成功し効果を享受する一方で、思わぬ落とし穴にはまって取り組みが停滞したり、見直しを迫られたりする例も散見される。この様な失敗に陥らないように、それぞれのステップで直面する課題への対処を紹介したい。次章ではまず、導入初期段階(トライアル)で想定される課題と対処について紹介する。

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