富士通は2月20日、流通業界に特化したIoT活用サービス基盤「FUJITSU IoT Solution SMAVIA(スマーヴィア)」を同日から販売開始すると発表した。業務システムやセンサ機器から発生するデータをつなげ、横断的に分析・可視化できるようにする。流通業界のデジタル革新を加速することで、人手不足の解消やビジネス拡大を支援する。
SMAVIAは、生産拠点や物流倉庫、輸配送網、販売店舗などから発生するシステムデータやセンシングデータを集約・蓄積するためのプラットフォームと、それらのデータをもとに分析・可視化するためのサービス群で構成される。顧客の要件に合わせた個別システムの構築も対応可能とする。
生産管理や倉庫管理、配送管理、販売管理など、システムごとにデータの粒度や発生頻度、フォーマットが異なる。「SMAVIAプラットフォーム」では、そうしたデータをクラウド上に収集・統合し、効果的なデータ収集と短期間でのシステム構築を支援する。
また、異種データの統合機能の他に、流通分野に特化したアルゴリズムも組み込まれている(図1)。同社の社内実践や流通業界でのシステム構築・運用で培ったノウハウをもとに開発。必要に応じて同社が提供する人工知能(AI)技術「Zinrai」も活用するとしている。

図1:SMAVIAの全体像
サプライチェーンの各システムに蓄積されたデータや、現場作業員の位置情報などのセンシングデータを組み合わせて、販売・在庫状況、物流コスト、作業効率などを分析することで、人手不足への対応や売り上げの最大化に向けた改善施策につなげるとする。
昨今の流通業界はトレンドの移り変わりが早く、廃棄ロスや機会損失が課題となっている。生産計画や流通在庫数、売上数といったデータをリアルタイムで把握することで、生産計画の精度を向上する。
「データ利活用サービス」は、(1)IoTツール類の導入、(2)業務システムとの連携、(3)可視化・分析ツール――をパッケージにして提供するもの。まずは、「倉庫作業員パフォーマンス」「店舗在庫探索アシスト」「質問回答アシスト」の3種類を用意する。2018年度中にサービスメニューを13種類まで拡充する計画(図2)。

図2:SMAVIAの今後の展開
倉庫作業員パフォーマンスは、倉庫管理データと倉庫作業員の位置や動線のセンシングデータを組み合わせて分析・可視化することで、業務効率を客観的に把握するサービス。作業員のスキルの平準化や生産性の向上を図る。
店舗在庫探索アシストは、無線ICタグ(RFID)と在庫管理データを組み合わせて、商品の所在を瞬時に把握するサービス。商品を探し出す時間を短縮することで販売機会の損失を防ぐ。社内実践例では、作業員平均で1人当たり14分/日の改善を確認。作業員35人で1カ月当たり160時間の削減効果があったとする。
質問回答アシストは、店員がAIチャットボットとのテキストベースのやり取りによって顧客からの問い合わせに対してスムーズな回答を支援するサービス。日々の問い合わせデータを機械学習させ、顧客の関心や売れ筋商品の予測、店舗ごとに異なる顧客の動向を分析し、店頭ラインアップの企画に活用するなど、マーケティング戦略や接客品質の向上に役立てられるという。
SMAVIAプラットフォームの税別価格は月額55万円から、倉庫作業員パフォーマンスは作業員1人当たり月額3000円。店舗在庫探索アシストと質問回答アシストは個別見積もりとなっている。製造小売(SPA)を含む小売業者、卸売業者、物流事業者を主な想定顧客とし、2020年度にSMAVIA関連ビジネスで累計200億円の売り上げを目指している。

記者会見に登壇した富士通 流通ビジネス本部 流通ビジネス推進室長 松本良浩氏