ちゃんとチェックすればいいじゃないかと考える人も多いだろう。しかし、何百、何千という案件を、予算編成の時に一気に精査する。しかも、そこにそうそう人間をかけられるものではなく、通常一人だ。だから、どうしてもチェックは甘くなる。
使うときにチェックをすればいいという考えもある。しかし、一度ついた予算は、予算をもらった部門にとっては権益だ。だから、効果が実際にはなかったとしても、何とか自身の部門の権益を守るためにやり切ろうとする。たまに、予算管理の裏筋を通って実際に執行してしまう。
これらの問題は、IT部門だけが悪いかと言われれば、改善を要望するユーザー部門も、予算を管理する経営管理部門も責任がある。IT部門だけの責任とは言い切れない。しかしながら、大きな責任割合があることは否めない。抜本的な改善をしていない、不作為の責任があることも否定できない。
こういったことは、オーナー企業では起きにくい。オーナー企業は予算の無駄遣いに敏感で、コストに非常に厳しい企業が多いため、効果が薄いものはやらない。要は、普通の企業はお金の無駄遣いに対する意識が、一段階低いのだ。
IT部門とて、予算は多い方がいいと思っている。確かに予算が多いことでメリットはある。何かの時のために、本当にやりたいことに振り向けられたりできる。しかしながら、経営全体の効率性から見てみると、明らかに非効率が野放しになっている状態である。こうしたことを許し、長い間改善できない状態になってしまっていること。そこが、経営からの信頼感を下げるのであろう。
- 宮本認(みやもと・みとむ)
- ビズオース マネージング ディレクター
- 大手外資系コンサルティングファーム、大手SIer、大手外資系リサーチファームを経て現職。17業種のNo.1/No.2企業に対するコンサルティング実績を持つ。金融業、流通業、サービス業を中心に、IT戦略の立案、デジタル戦略の立案、情報システム部門改革、デジタル事業の立ち上げ支援を行う。