ガートナージャパンは、企業が2020年末まで統合基幹業務システム(ERP)を新たなデジタルコアに転換するために、デジタルプラットフォームへの投資の50%以上を費やすとの見解を発表した。
ガートナーでは、2013年に従来のERPスイートが次第に解体され、より連携的で疎結合のERP環境に置き換えられるとし、安定していたERPの世界から新たな「ポストモダンERP」の時代が始まると提唱している。
この主張の背景には、デジタルトランスフォーメーションの進展がある。デジタルトランスフォーメーションには、新しいデジタルプラットフォームが、また、デジタルプラットフォームを構築するためには、新しいデジタルコアが必要となる。そして、デジタルコアの主要素として、安定した信頼できるERPを備えることが重要となる――という。
しかし、過度にカスタマイズされた、時代遅れ(レガシー)で柔軟性を欠いたERPを使用している企業では、急速に変化するビジネスニーズに対応できないため、デジタルプラットフォーム戦略の一環としてコアERPの刷新が必要になるという。
大幅にカスタマイズされた既存のERPの刷新や置き換えには多大なコストがかかるため、そうしたプロジェクトでは、経営層の賛同やエンドユーザーの幅広い関与が必要となるという。また、投資を正当化するためには、周到な戦略、計画、予算の策定や、包括的な変更管理に向けて準備することも求められるとした。
一方、ERPベンダーやITサービスプロバイダーにとっては、顧客のデジタルビジネス戦略に沿った、コスト効率に優れた刷新や置き換えを提案し、支援できることが、今後の重要な差別化要素になるとした。
またガートナーは、2020年までにパブリッククラウドに展開される実行系ERPが5%未満にとどまり、オンプレミスERPがクラウドによって一掃されないことが明白になるとしている。
SaaS ERPがERP全体の売り上げに占めるシェアは、2016年の29%から2020年には40%に増加すると予測されるが、生産管理や販売管理などの実行系ERPのみに着目すると、SaaS ERPのシェアは3%から7%に伸びるに過ぎないという。そして2020年まで、実行系ERPの売り上げの74%は、オンプレミスソリューションへの支出であり続けると見込んでいる。
こうした背景からガートナーは、製造業や資産集約型の企業の多くは、当面コアの実行系ERP機能をクラウドには移行せず、デジタルビジネスの基盤となるように刷新し、安定化させながら、既存のオンプレミスERPを使い続けるとしている。しかしミッションクリティカルなアプリケーションのクラウド移行に必要となる経験やスキルの蓄積につながる活動については、今すぐ着手することが求められるとした。
ガートナーは、その活動の一環として、ERPの刷新に当たっては、プロジェクト開始に先立ち、不要なカスタマイズはできる限り排除し、合理化を図ることを挙げた。また、デジタルビジネス戦略に沿ったポストモダンERP戦略や、自社にとってERPが果たす役割を定義することも重要だという。そして場合によってはマルチチャネル・コマース、API管理、IoT、人工知能(AI) といった発展中のテクノロジを、デジタルプラットフォームの必須要素としてERPと併せてどのように活用するかを明確化することも必要だとした。