(本記事はBizauthが提供する「BA BLOG」からの転載です)
ここまでの内容を、元も子もない話で締めくくりたい。それは、IT部門が苦悩する大きな要因の一つは、そもそも仕事が難しいということだ。想像以上に複雑で、カバーする対象が広く、変化が激しく、価値自体も変化が激しい。
従前、外国人の上司とスタッフを話をしていると、「Is he/she athlete or template consultant?」としばしば聞かれていた。要は、コンサルタントの能力タイプを「Athlete Consultant」と「Template Consultant」に分けていて、彼の仲間うち(有名コンサルティングファームを渡り歩いていた上司なので、米国一般ではそうなのであろう)では、スタッフをこう分類していたそうだ。
Athlete Consultantとは何でもできるコンサルタントであり、言うなれば万能選手である。最近あまり言わなくなったが、地頭の良いコンサルタントである。こういうコンサルタントは、事業戦略でも、人事制度でも、システムの要件定義でも、コスト削減でも、どの業界の仕事でも、基本的に何でもこなし、顧客満足を得ることができる。
一方、Template Consultantとはいわば、専門家に近いかもしれない。SAPの会計のみに詳しい、プロジェクト管理ならできる、セキュリティ監査ならできる、ITILならできるといった何か世の中に基準(Template)があって、そのTemplateに沿って仕事をするコンサルタントだ。
AthletIe Consutantと自負する筆者は、IT関連のコンサルティング以外にも、新規事業戦略、海外進出戦略、M&A戦略、組織設計、業績管理設計、R&D業務改革、人事評価制度設計、機能子会社改革、CRM、リスク管理、eCommerse、ERP構想~導入、PMI(Post Merger Integration)、ホテルのコンセプト設計、事務部門のBPRなど数多くの仕事に携わってきている。要は、会社機能の結構な部門の戦略や組織、人材、業務改革のコンサルティングを行う中で、会社の中の多くの部門の業務を詳細に見てきた。
そういう筆者が確信しているのであるが、IT部門の仕事は、難しい。もちろん、IT部門以外の営業部門や、管理部門、R&D部門や人事部門、事務部門それぞれが難しさと奥深さを抱えていることも理解している。そうしたことを考えた上でも、IT部門の仕事はやはり難しさを抱えていると思う。
どういった点が難しいかと言えば、領域の広さ、知らなければならない要素の複雑さと深さと、変化の激しさにある。
まず、領域の広さだが、基本的にIT部門が対象にしなければならない業務は、全社の業務だ。これは、間接部門なのである意味、当然である。マーケティングに始まり、営業、物流、生産管理、製造、顧客サービス、人事、経理、経営管理、各部門の文書管理、コミュニケーションなどさまざまだ。ある意味、企業全部の業務や活動がその視野に入る。しかも、全事業所が対象だ。
こんな部門は、他にはない。経理や人事などの他の間接部門と比べたときに、経理はお金の流れを中心に知ることとなる。人事は、人の問題を中心に扱うこととなるが、経理を支えるのもITであるし、人事を支えるのもITである。同程度の知識は持たねばならない。
知らなければならない事柄も非常に多い。業務がどうなっているか。これは、顧客からの注文が来て、実際に出荷されて届くまで、どういう伝票が流れることとなるかをつぶさに知る必要がある。オーダーから出荷まででなく、請求書がどう出され、入金がどうなり、それが会計にどう流れていくか、会社の伝票とモノやサービスの流れと、帳簿への記帳、業績としての集計という、企業全体の「情報」の流れを押さえていなければならない。