内山悟志「IT部門はどこに向かうのか」

事業部門のデジタル変革意識をどう醸成するか

内山悟志(ITRプリンシパル・アナリスト) 2018年07月19日 07時30分

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 デジタル技術を活用したイノベーションに対する期待が高まっていますが、業種業態、企業規模、業績の好不調などによって、こうした動きに対する姿勢はさまざまです。特に事業部門の人々のデジタル化や変革に対する意識の差は大きいといえます。デジタル化の推進を全社的なイニシアチブとするためにどのような働きかけが必要なのでしょうか

デジタル・ディスラプターの出現

 さまざまな業界においてディスラプター(破壊者)が台頭しています。特にデジタル技術を武器として登場したデジタル・ディスラプターは、これまでとまったく異なるビジネスモデルで既存の業界構造や商習慣に風穴を開け、既存の大企業の優位性を大きく揺るがす存在となっています。米国のアナリストであるジェームス・マクウィベイ氏は、その著書『DIGITAL DISRUPTION — 破壊的イノベーションの次世代戦略』(実業之日本社)の中で、デジタル・ディスラプターというのは、あらゆるところから現れ、デジタル・ツールやデジタル・プラットフォームを活用して顧客を奪い、業界にイノベーションを起こすと述べています。

 デジタル・ディスラプターの出現を「それは海外の話だ」「我々の業界とは異なる」といった論調で対岸の火事と捉える向きもあります。地域や業界によって脅威に対する温度差は確かに存在します。

 「対デジタル・ディスラプター戦略」(マイケル・ウェイド他著、日本経済新聞出版社)で紹介されているDBTセンターが行った941名の既存企業の上級エグゼクティブに対する定量的調査によると、今後5年以内に(市場シェア)上位10社の既存企業のうち平均して約4社が、デジタル・ディスラプションによってその地位を奪われるとしています。とりわけ、通信やテクノロジの業界で大きな影響が及ぶと認識されていますが、このような現象はハイテク業界にかぎった話ではありません。

 同調査の別の質問では、「デジタル・ディスラプションの結果、共創から取り残されるリスクがある程度または著しく増加した」と回答した人の割合において、旅行・ホテル業界が第1位(49%)、次いで小売(47%)、メディア・エンターテインメント(46%)、金融サービス(45%)、消費財製造(44%)の順となっており、通信やテクノロジーの業界を上回っています。このように、非常に幅広い業界においてデジタル・ディスラプションの脅威が認識されています。

デジタル革新に必ずしも積極的でない事業部門

 昨今、デジタルイノベーションに対するIT部門のあり方についての議論が盛んであり、「モード1とモード2」や「守りのIT部門と攻めのIT部門」といった分類を耳にすることがあるでしょう。しかし、この議論はIT部門に限ったものではなく、会社全体にも当てはまるものです。つまり企業が、従来の戦略と既存事業の延長上の成長を目指すのか、それともデジタル変革を重視した組織に生まれ変わるのかが問われているということです。

 それでは、国内企業の事業部門におけるデジタル革新への意識はどの程度でしょうか。ITRは、2017年11月に、国内企業の非IT部門に所属する個人(有効回答:665件)に対してデジタルイノベーションに関するアンケート調査を実施しました。回答者には、経営者や事業部門の責任者、IT部門以外の現場マネージャーなどが含まれます。これによれば、「ITやデジタル技術を活用した業務やビジネスの変革」について、「重要」と認識している回答者の割合は8割以上に達したものの、「全社レベルで取り組むべき最重要事項」とした割合は10%強にとどまりました。一方で「重要だが、自社においては効果が限定的だと思う」とした割合が30%を上回っており、デジタルイノベーションを否定こそしないまでもその効果に懐疑的な人が多いことが明らかとなりました(図1)。


 このように、国内企業では、デジタル技術を活用したイノベーションに対する意識は必ずしも高くありません。グローバルな競争に晒されていなかったり、具体的なデジタル・ディスラプターが明確に表れていなかったりという業界では、あまり切迫感がないのかもしれません。しかし、冒頭で述べたようにデジタル・ディスラプターは、あらゆるところから現れる可能性があり、それは海外企業かもしれないし、国内のベンチャー企業や異業種からの参入者かもしれません。

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