海外コメンタリー

産業用IoTで「未来の精製工場」を目指す米石油化学会社 - (page 2)

Teena Maddox (TechRepublic) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2018-07-31 06:30

家族経営の企業をアップデート

 Texmarkは、現最高経営責任者(CEO)Douglas Smith氏の父によって1962年に設立された。

 Smith氏は、「わが社は、DCPDやその他の化学製品の品質と製造効率を改善するために、過去15年間にわたって、処理施設にかなりの投資を行ってきた。しかし約3年前に分析を行った結果、一部の分野では変更が必要だと判断した。その判断の一部はわれわれ自身が行ったが、一部はほかの企業によって示唆されたものだった。その変更が必要な点の1つが、施設内のさまざまな機器の状態を総合的に評価する『機器の健全性』と呼ばれるものだ。機器の健全性には以前から取り組んでいたが、従来のやり方は非線形的なものだった」と述べている。

 新たな検査計画を実施する必要が生じたために、保険の免責額が倍になったことが同社の行動のきっかけになった。Smith氏は、同社の業務担当バイスプレジデントLinda Salinas氏と仕事を進めているうちに、同社のテクノロジの基盤である「DTSと呼ばれるわが社の制御システム」も改善する必要があると考えるようになった。「このシステムの更新が必要があることは分かっており、これは長年にわたって少しずつ構築されてきたものだった。これに手を入れなければならなかった」と同氏は述べている。

パーティバスに乗ってHPEのIoTイノベーションラボに

 同氏らは、HPEとイノベーションについて議論した後、同社のIoTラボを訪ねることを決めた。当時、多くの従業員にとってIoTは新しい概念だった。

 Selina氏は当時を振り返り、「われわれはパーティバスを借り切って、そこに13人の従業員を乗せて行った。全員がおそろいのTexmarkのシャツを着て、見学旅行に行くという雰囲気だった。ミーティングに出ていなかった従業員にとって、この旅行は娯楽のように感じられていたようだった。彼らはIoTが何だか知らなかった。知っていたのは、ただ工場から離れてどこかに行くということと、それが業務だということだけだ。そこに集められたメンバーは、研究部門やエンジニアリング、運用、メンテナンス、管理などさまざまな部門の人間で構成されており、わが社の事業を動かしている人間をうまく代表するグループになっていた」と語った。

 「ラボに着くと、まずHPEの担当者の1人がミニレクチャーを開いて、IoTの基本的な説明をしてくれた。しかしそのレクチャーが終わっても、IoTが何を意味しているのかはよく分からなかった」と同氏は言う。「その後われわれは、実際にラボを見て回った。それはまるで双方向型の科学博物館のようだった」

 全員の注意を引いたのは、ラボの中央に展示されていたポンプだった。

 「ポンプはわが社の事業の中核を占めるものの1つであり、ポンプについては誰もがよく知っていた。われわれ全員がそのポンプに引き付けられた。それはFlowserve製のポンプで、ただ緑色の水をポンプでくみ上げて吐き出しているだけだった」とSalinas氏は言う。「ポンプはわが社の工場にもあり、製品を貯蔵タンクから処理に投入したり、処理の終了後に貯蔵タンクやトラックや軌道車に移したりするのに使われているため、見慣れた存在だった。そこに近づいてデモンストレーションを見ると、そのポンプは調整を狂わせられるようになっていた。つまりそのポンプは、意図的に最適ではない形で動作させることができた。そして、『iPad』のような携帯型のデバイスにそのポンプの状態が表示されていた。確か、正常に動作している最初の状態では、予測寿命は600時間くらいになっていた。しかし、そのポンプの調整を狂わせると、動作に異常が発生し始め、寿命が減ってしまった。600時間あった寿命が、60時間になってしまったという具合だった。さらに調整を大きく狂わせると、寿命は極端に小さな数字になり、例えばあと6時間しか持たないといった風になるかもしれない」

Texmark
提供:Texmark

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    セキュリティ担当者に贈る、従業員のリテラシーが測れる「情報セキュリティ理解度チェックテスト」

  2. クラウドコンピューティング

    生成 AI の真価を引き出すアプリケーション戦略--ユースケースから導くアプローチ

  3. セキュリティ

    サイバー攻撃の“大規模感染”、調査でみえた2024年の脅威動向と課題解決策

  4. セキュリティ

    IoTデバイスや重要インフラを標的としたサイバー攻撃が増加、2023年下半期グローバル脅威レポート

  5. セキュリティ

    従業員のセキュリティ教育の成功に役立つ「従業員教育ToDoリスト」10ステップ

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]