IoT基盤「MindSphere」は後発でも着実に成長--デジタル戦略推進のシーメンス

國谷武史 (編集部)

2018-09-06 17:43

 シーメンスは9月6日、都内で新戦略説明会を開き、デジタルビジネスへの取り組みなどについて紹介した。IoTプラットフォームとしてグローバル展開する「MindSphere」の国内導入事案が増加しているとし、「ウサギ(先行の他社基盤)とカメ(MindSphere)の競争ではないが、カメとして着実に成長しており、デジタルビジネスを推進していく」(代表取締役社長兼最高経営責任者の藤田研一氏)と語った。

シーメンス 代表取締役社長兼最高経営責任者の藤田研一氏
シーメンス 代表取締役社長兼最高経営責任者の藤田研一氏

 新戦略の「Vision 2020+」はドイツ本社が8月1日に発表したもので、事業ポートフォリオの見直しに伴う戦略会社(風力発電のSiemens Gamesaなど)と社内カンパニー(ガス・電力、スマートインフラ、デジタル産業)への再編およびデジタルビジネスへのシフトが柱となる。2020年を目標年次とした旧戦略「Vision 2020」の目標を前倒しで達成しつつあるといい、新戦略ではデジタルシフトによる成長の促進を掲げる。

 MindSphereは2017年10月に提供を開始し、同社では「クラウドベースのIoT向けOS」と位置付ける。既に世界全体で100万台以上の機器が接続され、「産業分野では世界最大級のIoTプラットフォーム」(藤田氏)という。MindSphereを含むソフトウェア事業の売り上げは約6800億円規模で、Siemens全体に占める割合は5%ほどというが、藤田氏は「デジタル分野の成長率は80%で、ソフトウェア企業として欧州では(SAPに次ぐ)第2位、世界全体でもトップ10入りしている」とアピールする。

新戦略の柱と位置付けるデジタル化の本格的な取り組みは2012年から
新戦略の柱と位置付けるデジタル化の本格的な取り組みは2012年から

 藤田氏によると、国内でのMindSphereの導入事案は50件近くに上るといい、自動車部品・工作機械のジェイテクトなどが採用を表明。また、制御盤開発などを手掛けるアイデン(石川県)と共同でMindSphereやファクトリーオートメーション(FA)製品「SIMATIC」を組み合わせたIoTショールームを金沢市に開設するなど、大手から中小までの広範な企業顧客に訴求する。「IoTプラットフォームは初期投資が軽微であるなど中小も導入しやすく、データの共有・活用によるデジタル化に適している」(藤田氏)という。

 今後の展開で藤田氏は(1)パートナー、(2)クラウド、(3)オープンアークテクチャ――の3点を挙げる。(1)では「多様な産業分野のニーズへの対応にはパートナーシップが不可欠」とし、(2)については「エッジとの共存がポイントになる」と説明。(3)は「幅広いパートナーやエッジとの連携においてオープンであることが基本」と話す。

 ただ、FAなど製造分野におけるソフトウェアやクラウドの活用には「ハードウェアが前提で一体的な取り組みが必要」とも語る。「ある顧客は、ITベンダーに工場のデジタル化を相談したが、何をどうモニタリングすべきか、データにどのような意味があるかといったことを理解しておらず、IT側は工場の中身を分かっていないと話していた。ハードウェアとソフトウェアの双方があってデジタル化といえる」(藤田氏)

日本における新経営戦略の重点施策
日本における新経営戦略の重点施策

 また8月上旬には、IoTプラットフォーム「Predix」を先行したGeneral Electric(GE)がデジタル事業の売却を検討しているとの報道がなされた。これについて藤田氏は、個人的な見解とした上で、「GEさんの戦略は正しいと思う。だが積極的な投資に市場が追い付いてこなかったのではないか」とコメント。「産業分野のデジタル化は単なるバズワードか」との報道陣の質問に対し、「GEさんとは電力分野で競合するが、それ以外の顧客層は異なる。IoTの本命はシーメンスの主要顧客となる製造業であり、シーメンスは(IoTプラットフォームでは後発の)“カメ”だが、着実な取り組みを進められている」と回答した。

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