コンサルティング現場のカラクリ

日本のすごいIT部門(1):徹底したコスト管理ができるIT部門

宮本認(ビズオース ) 2018年09月24日 07時00分

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(本記事はBizauthが提供する「BA BLOG」からの転載です)

日本のIT部門の中にもすごいIT部門がある

 筆者は、かれこれ25年以上、IT周りのコンサルティングに携わり、17業種のトップ企業をはじめ、銀行、保険会社、製造業、流通業、運輸業、電力業などのIT部門と付き合ってきた。こうした経験を通し、「日本のIT部門は苦悩している」と実感し、ここまで紹介してきたようなさまざまな考えを持つに至っている。

 しかし、そういう日本においても、全てのIT部門がそうというわけではない。その素晴らしさに感嘆したことも少なくはない。今回から複数回にわたって、筆者が出会った「すごいIT部門」を紹介したい。なお、筆者には守秘義務があり、実名や、実際の会社が分かるような書き方をすることはできない。その点は、ご容赦いただきたい。また、筆者も全てのIT部門を知っているわけではないので、他にもすごいIT部門があるであろうことは、あらかじめご理解いただきたい。

徹底したコスト管理ができるIT部門

 最初に紹介したいのは、某金融機関のIT部門である。この金融機関、とにかくコスト管理がものすごいのだ。これを仮にA社と呼ぼう。

 よく言われることなのだが、製造業や流通業では、例え同じ業界であったとしても、仕入れの仕方、生産管理の考え方、製造技術、販売ルートなどが異なることが多く、同じ業務フロー、同じシステム機能が必要となることは、金融機関に比べて相対的に少ない。だからこそ、統合基幹業務システム(ERP)の導入でアドオン開発やカスタマイズが多発する。

 一方、金融機関においては、基本的に同じ業種であれば、業務フローや機能要件は、そこまで変わらない。当然、事務センターの設計思想には、2層型の事務を考えるのか、母店を設けて3層で考えるのかといった違いがあるので、全く同じというわけではない。しかしながら、製造業ほどの違いはなく、同じようなシステムや機能要件を持っている。そういうわけであるから、例えば、地方銀行業界においては、クラウド型のサービスで共同利用することも可能となるのだ。

 そうした中、A社は同業他社に比べ、ITコストが3割から4割ほど安いのだ。ITは経営に貢献すべきだとよく言われる。ITコストか3~4割も安いとなると、経営への利益貢献は無視できないレベルを超えて、“超絶怒涛”の域に入る。金融機関の売上高に占めるIT投資の比率は、他の業種に比べて高い。製造業では1~3%くらいなのだが、金融機関の場合は7%から多いときには20%を超えるときもある。ITコストの大きさと経営にとっての重要性は製造業の比ではない。だから、ITコストが安いということは、経営にとってものすごい貢献となる。

 しかも、どうしてこうしたことができるのか。それは、多くの人たちにとって謎なのである。規制当局にも、ベンダーにも、当然、われわれのようなコンサルタントにも、その真相は分からない。真相が分からないということは、周囲がまねできないということだ。そして、それが「真水」で経営貢献をしているとなると、その部門の重要性は経営にとって計り知れないものであろう。

 よって、筆者も正確なところ説明できないのではあるが、A社と付き合いをする中で得たさまざまな断片情報をもとに筆者が考えたところを説明したい。それは、「徹底力」ではないかと思っている。A社は、上から下まで組織全員が同じことを考え、同じような行動を取っている。この無駄のない統率された動きが、積もり積もって大きな成果をもたらしているのではないかと考えている。

 実際に、最高情報責任者(CIO)から始まり、配下の部長、課長、担当者、IT機能会社、実行部隊と連なる縦の連鎖があるが、その全ての人のコスト意識たるや恐ろしいものがある。1円の誤差さえ許さない。1円でも予算が超過したら認められない。これは、例えで言っているのではなく、実際にこの金融機関で働いていた人の話だ。また、結構な数の企業で認められている、必要ならば追加予算を申請するという実例もない。当然、許されないし許さない。こうしたことは、言うは易し、行うは難しの典型例である。なぜなら、一つでも事例を作ってしまうと、せきを切ったように他の案件でも追加予算が請求される流れになる。組織とはそういうものだ。だから、このA社においては絶対に許されない。

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