“ひとり情シス”が集結、課題や悩みを共有--存在感が高まり、役割に変化

小池晃臣

2018-11-12 07:00

 企業の規模を問わず、ビジネスの遂行にITは欠かせなくなって久しいが、中堅・中小企業においては社内のITに関わる全ての事柄にたった一人で対応せねばならない、いわゆる「ひとり情シス」が数多く存在している。ひとり情シスはその名の通り社内でも仕事上の悩みや疑問などを相談する相手がなかなか見つからないのも現実だ。そうした中、約80人ものひとり情シスが一堂に会するイベント「ひとり情シス大会議」が10月19日、デルの主催により都内で開催された。

変わりつつある、ひとり情シスの形と立ち位置

執行役員 広域営業統括本部 統括本部長の清水博氏
執行役員 広域営業統括本部 統括本部長の清水博氏

 まずは「ひとり情シス 最新動向」と題して執行役員 広域営業統括本部 統括本部長の清水博氏が登壇した。同氏は、連載「ひとり情シスの本当のところ」のほか、2018年7月には著書『ひとり情シス』(東洋経済新報社)を刊行。いわば、日本の“ひとり情シス”界における第一人者といえる存在だ。1000人近くのひとり情シスに会い、対話をしてきたという清水氏は、ひとり情シスにまつわるエピソードや、現在の傾向と対策などについて語った。

 日頃からひとり情シス関連の情報収得に務めているという同氏率いる広域営業統括本部では、これまで2000件を超えるアンケートを実施するとともに、外勤営業部隊から週に数百件の営業日報を集め、内勤営業も日に2000件の電話でのコンタクトを取り、ひとり情シスとの密な接点を持っている。また、全国の都市でひとり情シスを対象にしたセミナーを開催しており、セミナー後には懇親会も設けるなど、ひとり情シスの生の声に触れる環境を整えている。従業員100~1000人の規模の企業を対象とする広域営業統括本部が発足して18カ月の間には、47都道府県での全国セミナー開催や中堅企業向けクラウドサービスの提供、SAPジャパンとのビジネス連携、IT投資動向調査など、活動の幅を拡大してきた。

 そんな同本部が実施した調査によると、ひとり情シスの割合が最も多いのが従業員100~199人の企業だ。そしてひとり情シスの仕事の内訳を見ると、「PC運用・管理」が18%で最も割合が高く、「サーバ運用・管理」(15%)、「ネットワーク運用・管理」(10%)、「システム開発・導入(スクラッチ)」(10%)、「情報セキュリティ管理」(9%)と続いている。またひとり情シスの年齢は、50~54歳が17.9%で最も多い。この点について清水氏は、「少々いびつな構造にあるといえる」とコメントした。

ひとり情シスの仕事の内訳
ひとり情シスの仕事の内訳

 ひとり情シスのトレンドとしては、「最近では兼任型が増えてきている」と清水氏は指摘する。これは、所属部門はIT部門ではない兼任の情シス担当者であり、人事や総務など管理部門のスタッフがITを兼務するパターンが多いという。

 こうした動向も踏まえ、清水氏はひとり情シスのトレンドについて次のようにコメントした。「今は多くの企業が働き方改革に取り組む中、そちらに時間が取られがちなため、ITとの兼務はより厳しい状況になってきている。ただし、ひとり情シスのキャリアパスとして、将来的に経営層に近いところまで行くケースも増えてきていることから、社内の仕組みを熟知しているひとり情シスが、企業から好意的に受け入れられる傾向にあるといえる。以前とは、ひとり情シスの形や立ち位置が変わってきたのではないか」

 また、退職・転職するひとり情シスが増えてきていることから、少しずつ人材が流動化している傾向もうかがえる。

 「ITに関する仕事が全般的に増えており、ひとり情シスにとってさらに忙しい状況となっているが、顧客企業を見ていると良い側面もあるようだ。なぜなら、ひとりから二人に情シス担当者を増員しようと考える企業が3割あるからで、こうしたデータはわれわれとしても初めてのこと」と清水氏。

 一方で、ひとり情シスの方が二人の情シスよりもセキュリティ事故は少ない傾向にあるという。この点について清水氏は、「情シスが増えることでセキュリティに隙間ができるという側面もあるのかもしれない」とコメント。そして最後に、「ひとり情シスに関するさまざまな活動を展開しているので、何かあればぜひ相談していただきたい」と会場に向かって呼びかけた。

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