MicrosoftとWalmartは7月に、「戦略的パートナーシップ」を発表した。当時Walmartは、「Azure」「Microsoft 365」や、Microsoftの持つ人工知能(AI)やモノのインターネット(IoT)関連のツールや技術を利用して、業務を刷新すると述べていた。
米国時間11月5日、両社はその際発表した5年契約の延長線上の取り組みを進めることを明らかにした。その内容には、Walmartが米テキサス州オースティンに持っているイノベーション拠点の拡大も含まれている。Microsoftのブログ記事によれば、このWalmartの「クラウド工場」は、同拠点を拡大して2019年にオープンし、WalmartとMicrosoftの技術者約30人が共に働く予定だという。
Walmartはこの取り組みで、多数の社内アプリケーションをAzureに移行するほか、新たなクラウドネイティブアプリケーションの開発も行う。同社の担当役員は、Microsoftが提供する「Cognitive Services」や機械学習、チャットボットの技術を利用する予定だと述べている。
MicrosoftがWalmartをパートナーとして獲得したことは、いくつかの意味で注目に値する。
第1にWalmartは、Amazonの対抗サービスとして、Microsoftが獲得を目指していた顧客の典型的な例だと言える。Amazonはクラウドプロバイダーだが、実店舗を主とする小売業者にとっては競合企業でもあるからだ。
また、今回のWalmartとの契約は、筆者にとって、Microsoftが使う「パートナー」という言葉の意味が進化していることについて議論するよい機会となりそうだ。
2年ほど前まで、Microsoftの役員が「パートナー」と言えば、販売代理店やインテグレーターのパートナー、あるいはOEMや独立系ソフトウェアベンダーのパートナーを指していた。しかし同社は最近、パートナーやパートナーシップといった言葉をずっと広い意味で使っているようだ。今では、顧客の一部も「パートナー」とされるようになった。
多くの場合、Microsoftが顧客をパートナーと呼んでいることに対する説明は、今回のWalmartのケースのように、Microsoftのエンジニアやマネージャーが顧客のITチームや経営チームと肩を並べて仕事をするから、というもののようだ。実際には、これは今に始まったことではない。Microsoftは以前から重要な顧客の社内にエンジニアやサポート担当者を配置してきたし、これはことによると何十年も前からの話だ。
しかしMicrosoftは、今では状況が違っていると主張している。