本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉をいくつか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、セールスフォース・ドットコムの小出伸一 代表取締役会長兼社長と、日本IBMの吉崎敏文 執行役員の発言を紹介する。
「第4次産業革命は顧客の時代である」
(セールスフォース・ドットコム 小出伸一 代表取締役会長兼社長)
セールスフォース・ドットコムの小出伸一 代表取締役会長兼社長
セールスフォース・ドットコムが先頃、年次イベント「Salesforce World Tour Tokyo」を東京・有明の東京ビッグサイトで開催した。小出氏の冒頭の発言はその基調講演で、これまでの産業革命を振り返ったうえで第4次の核心について語ったものである。
小出氏はこれまでの産業革命においてキーとなったテクノロジについて、1700年代の第1次は「蒸気機関」、1800年代の第2次は「電気」、1900年代の第3次は「コンピューティング」を挙げ、現在の第4次は「すべてのものがつながる世界」と表現。デバイス、センサ、各種マシンなどをつながる対象として挙げた上で、「つながったものの先には必ず顧客がいる」とし、それがつまりは「第4次産業革命は顧客の時代」との見解となった。
では、つながった世界では何が起きているのか。同氏は、「最も注目すべきは、顧客がこれまで入手できなかったさまざまな情報が手に入れられるようになり、もはや企業よりも情報武装しているかもしれないということだ。これに対し、企業はそうした顧客の情報武装の上を行くようなカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)を提供できるかどうかが、これからの最大の差別化戦略になっていくだろう」との見方を示した。
その上で、小出氏はセブン‐イレブンの事例を次のように紹介した。
「セブン‐イレブンは全世界に店舗を展開し、1日に2200万人のお客さまに利用されている。これまではその2200万人のお客さまに向けて、徹底した商品管理を行うことでカスタマーエクスペリエンスを提供してきたが、この夏、もっと便利にお客さま個々に買い物をしていただけるように、スマートフォン向けのアプリを配信した。これによって、お客さま個々と密接につながったことになる」
その上で、こう解説した。
「その狙いをキャッチフレーズで言うと、これまでは“近くて便利”だったセブン‐イレブンが、これからは“私に便利”になるわけだ。これまでの商品管理に加えてきめ細かい顧客管理を行うことで、一人ひとりのお客さまに対して、できる限りのカスタマーエクスペリエンスを提供していこうというものだ。こうしたチャレンジが、今まさに多くの企業で展開されている」
そうした企業を支援するのが、「Salesforce Customer Success Platform」というわけだが、「近くて便利」から「私に便利」というキャッチフレーズが印象強かったので、冒頭の明言にまつわる話とともに、セブン‐イレブンの事例も取り上げさせてもらった次第である。
Salesforce Customer Success Platformの概要