ガートナー ジャパンは2月26日、「日本におけるエンタプライズ・アプリケーションのアジリティの向上を進言する2019年の展望」を発表した。SAP ERPのサポート終了に伴う移行対応など難題が山積しているとし、懸念される状況を予測している。
ガートナーによる「展望」は5項目で、1つは2025年に標準の保守期間が終了する「SAP Business Suite(SAP ERP)」に関するもの。SAP ERPからSAP S/4HANAへの移行を検討する企業が増える一方、プロジェクトが大規模化することで対応に当たる人材が大幅に不足し、ガートナーは「2022年にかけて大規模プロジェクトの過半数がパートナー候補の1社以上からの提案辞退を経験する」と予想する。実際、ガートナーにはユーザー企業から「複数の候補に提案要請書を提示したが一部から辞退された」との相談が寄せられているという。
また別の予想では、日本企業の6割程度が2022年までに既存アプリケーションにおけるAPI化の改修を試みるものの、目標を達成できる企業は1割にも満たないとした。企業は「デジタル変革」の一環として、APIを活用した社内外のアプリケーション連携による新たな事業開発などを目指すものの、ガートナーは新しいビジネスモデルやAPI関連技術のスキルが不足しているほか、アプリケーション接続に要するIT部門のリソースの欠如が深刻化していると指摘する。
この他の予想は下記の通り。
- 2022年までに大企業の80%が革新レイヤのアプリケーション開発にアジャイル型開発を採用するが、差別化・記録レイヤのアプリケーションにまでアジャイル型開発を採用し、定着させる大企業は10%に満たない
- 2023年を迎えて日本の大企業における基幹系システムの80%が商用のリレーショナルデータベース管理システム(RDBMS)を使い、オンプレミスで運用し続ける。ほとんどの企業は、主に費用面で商用からオープンソースに変更したいが、移行費用や障害対応リスクを考えると実施できない
- 2022年末まで最も利用される分析ツールはExcel。BIツールも導入されたが、データの抽出や加工にはExcelが必要とされる。Excelは手軽だが、労力が多くミスの発見が難しいなど弊害も。テクノロジの進化でも今後4年程度で解消されることはない