Microsoftの最高経営責任者(CEO)Satya Nadella氏は、スペインのバルセロナで開催された「MWC」の基調講演で、今はビッグデータや人工知能(AI)、組み込み技術、5G接続などの「ツール」の発展に注目が集まっているが、今後はこれらの技術が社会やビジネスに浸透し、ITの世界だけのものだとは見なされなくなると語った。
「世界にコンピューティングが組み込まれていくにつれて、世界とコンピューティングを分けて考えることは難しくなる。コンピューティングはすでにあらゆる場所に存在している」とNadella氏は言う。
「今から10年後には、テクノロジ業界とそれ以外の業界にそうした違いはなくなっているだろう」
基調講演では、Nadella氏と一緒にDaimler会長兼Mercedes-Benz Cars統括のDieter Zetsche氏も登壇した。同氏は、今やネットワークとの接続性は自動車やトラックも含めてあらゆるものの一部になっていると述べ、最新のMercedesの車両では多くのコードが使用されていると指摘した。「自動車はほとんどコンピュータのようになっている。ただ大きく、より快適なコンピュータなだけだ」と同氏は述べた。
Microsoftにとって、この水準の接続性は、ユビキタスコンピューティングの世界に向けたごく小さな一歩にすぎない。これは、同社が他社をリードしたいと考えている分野でもある。そのための取り組みの例が、この基調講演の24時間前にMWCで発表された、複合現実ヘッドセット「HoloLens 2」だ。
しかし、企業が今後数年の間に起こる可能性のある変化についていこうとすれば、業界に関わらず、成長するにはソフトウェアのスキルが重要な資源になると認識する必要がある、とNadella氏は語った。
同氏はまた、「業界に関係なく、あらゆる企業が、自社の事業に関連する領域で競争力を維持するためにソフトウェアをマスターする必要がある。それにはどうすればいいのか?」と問いかけた。
Mercedes-Benzもこの問題から逃れられるわけではない。同社には100年を超える歴史があるが、Zetsche氏は今後もこのままトップの座を維持できるわけではなく、同社を取り巻く世界や技術が変わっていくにつれて、業務の進め方や、ビジネスのやり方を変えていく必要があることを認識していると話した。
同氏は「自動車業界のパイオニアだと誇りに思うのはいいが、自己満足に陥ってはいけない」と述べたあと、同社の幹部がシリコンバレーのスタートアップを訪問し、なぜそれらのスタートアップが成功し、Mercedes-Benzがそのアプローチを利用できないかを学んだ際のことを詳しく説明した。同社が未来に対応するために進めていることの一環として新たな技術の開発があり、これにはコネクテッドカーだけでなく、自動運転車や電気自動車も含まれるという。
Zetsche氏は「わが社の未来は保証されているわけではなく、社員が異なる環境に合わせて変化していくこと、変化に対する意識を生み出すことが重要だ」と述べるとともに、同社は直接競合している企業だけではなく、破壊的な改革をもたらす新たな企業の参入にも備える必要があると付け加えた。「自動車業界は変革のさなかにあるが、10年後には今とは違う業界になっており、競争する相手も変わっているはずだと考えている」と同氏は語った。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。