流通・小売向けのテクノロジ展示会「リテールテック JAPAN 2019」が3月5~8日、東京ビッグサイトで開催された。マーケティングプロモーションから物流管理まで多彩なテクノロジソリューションが紹介されたが、近い将来のトレンドになりそうなクラウド連携によるリアルタイム性の高いデータ活用にフォーカスした出展社の取り組みをレポートする。
バッテリレスセンサタグとエッジ、クラウドをつなぐ
バーコードやスキャナ、ラベリング機器などの自動認識ソリューションを手掛けるサトーは、2021年の製品化を予定するバッテリレスBluetoothセンサタグとクラウドを連携させた店舗向けのソリューションイメージを出展した。
バッテリレスBluetoothセンサタグは、イスラエルのベンチャー企業Wiliotが開発しているもので、サトーは2018年から協業し、製品化とソリューション開発を進める。タグは1.92ミリ四方のフィルム形状で、周囲の微弱な電磁波を蓄電することによりバッテリ不要でスマートフォンなどのBluetooth対応機器と通信できる。タグに加速度や感圧など各種センサを装着でき、周囲のアンテナ部を含めても最小で1センチ四方の大きさとなる。
2021年の製品化を予定するバッテリレスBluetoothセンサタグ
アパレル店舗に模したブースでは、センサ(バッテリレスBluetoothセンサタグは開発中のためデモには既存製品を使用)によって来店や移動、滞在時間、手に取った商品の種類などを認識し、デジタルサイネージやスマートフォンで商品の説明動画を再生したり、購入時にキャッシュレス決済を行ったりできる様子を紹介した。センサタグ自体は加工によってさまざまな物品に貼付できるが、例えば、衣類では素材を工夫することで洗濯やアイロン作業を繰り返しても機能に影響しないとしている。
Wiliot プロダクトマネジメントディレクターのRorerto Sandre氏は、「汎用的な2.4GHz帯のBluetoothを利用することでUHF帯を使うRFIDに比べて安価だ。タグの形状の自由度も極めて高く、既存のRFIDよりも活用の幅が広まる」と話す。当初の単体価格は未定だが、「RFIDと同様に量産効果を期待でき、RFIDよりも広い活用シーンを予想していることから、さらなるコストダウンが可能」(サトー ソリューション事業統括部の上田佳正氏)という。
バッテリレスBluetoothセンサタグの活用イメージ。タグを貼付した衣類を試着室も持ち込むと、その場のディスプレイや顧客のスマートフォン画面に商品情報を表示
また、ブースではセンサで取得したデータをバックヤードのエッジサーバで処理し、ブース内を区切ったエリアの入退室データをクラウドにアップロードするシステム構成とした。特別にシスコシステムズと共同で「Cisco Kinetic」を利用したアプリケーションを開発。データをエッジ処理し、Microsoft Azureに最小現のデータをアップロードして、PowerBIの分析で来店客の状況をほぼリアルタイムにグラフダッシュボードで可視化させていた。
サトーブースのバックヤードにCisco UCSサーバが置かれ、センサからのデータをエッジ処理している。ここではブース訪問者の動きをリアルタイムに可視化した
エッジ処理後のデータはMicosoft Azureにアップロード。PowerBIでグラフデータとしてさらに見やすく訪問者の状況を可視化していた
サトー ソリューション事業統括部 企画・推進グループの平田和也氏は、「バッテリレスBluetoothセンサタグは、店舗活用などのBtoBに限定せず、例えば、メーカーが商品購入者に向けてスマートフォンアプリで商品の日々の活用をアドバイスできるようなBtoCにも広がるソリューション」と話す。同社では、2020年までに国内小売企業と実証を行い、2021年の商品化を計画している。