静岡県浜松市とKDDIは3月18日、浜松市中山間地域(天竜区、北区北部)の活性化に関する協定を締結した。アワビの陸上養殖における水質管理の効率化に向けて、4月から浜松市天竜区佐久間町中部にある旧佐久間学校給食センター施設で、IoTの実証事業を行う予定だ。
中山間地域の「人口減少」「産業不足」といった課題を抱えている浜松市では、地域活性化のため、2015年1月からアワビの陸上養殖事業に取り組んできた。水産物の陸上養殖は、海水温の変化や病原菌の環境変化などによる被害のリスクが低い分、一年を通して安定的に出荷できるという。
だがアワビの陸上養殖に関しては、作業員が毎日水槽を目視で確認し、水温などの環境情報を手作業で取得しなければならない。また、生死を判定する際は一匹ずつ触って行うため、死骸の回収が遅れることがある。その結果、アンモニアなどの有害な成分が水槽に充満し、アワビが全滅する危険があるという。こういった背景から、両者は今回の実証事業に踏み切ったと説明する。
この実証事業では、「水質センサ」「遠隔監視カメラ」などを導入する。水質センサは、水槽に設置され、水温、塩分濃度、水素イオン指数を遠隔から計測する。データを1時間おきにクラウドへ送信し、養殖管理者がスマートフォンなどで確認。水質が異常な際は、メールで警報を出す仕組みになっている。
遠隔監視カメラに関しては、ろ過槽に設置され、水の汚れ具合を映像で記録する。水質センサと同様、データを1時間おきにクラウドへ送信することで、水質異常の素早い検知、水質悪化の防止を可能にするという。アワビの生死判定は、映像データから行うことを目指している。
役割分担は、浜松市が実証フィールドの提供、ニーズの聞き取りや調整、効果検証を行い、KDDIが実証機器、通信環境、クラウド環境を提供する。
KDDIは「水質管理の効率化に加え、新たな種苗の飼育も予定している。浜松市の環境に適した養殖技術を確立し、将来的には地域特産品として販路拡大を目指すつもりだ」と語った。
実証事業イメージ(出典:KDDI)