デロイト トーマツ グループは3月26日、セキュリティの新会社となる「デロイト トーマツ サイバー合同会社」を4月に設立し、6月から本格的に事業を展開すると発表した。既存のデロイト トーマツ リスクサービスとデロイト トーマツコンサルティングでサイバーセキュリティ関連の活動を担当する約120人のメンバーで構成される。代表執行役にはデロイト トーマツ グループ リスクアドバイザリービジネスリーダー(監査法人トーマツ執行役)の木村研一氏、最高技術責任者(CTO)にはデロイト トーマツ リスクサービス代表取締役社長の丸山満彦氏が就任する。
新会社ではデロイト トーマツ グループのリスク関連とサイバーセキュリティ関連のリソースを統合
新会社設立の狙いについて木村氏は、企業をはじめデジタル変革に向けた取り組みが国内に広まる中で、デロイト トーマツ グループに寄れられるコンサルティング案件の多くがデジタル関連に集中しているためと説明した。デジタル変革は、その取り組みの中で特にサイバー関連リスクへの対応も重要だと位置付け、同グループがデジタル分野への投資を強化する一環で、従来のサイバーセキュリティ事業とリスク対応事業を統合する新会社の設立に至ったとしている。
新会社における人材育成方針。国内外で広く人材を募集するが、新卒採用に軸足を置く
新会社では、当初の120人体制から3年後に250人体制への拡充を計画する。丸山氏は、新会社の施策において、人材の採用と育成を重点項目に挙げた。人員の増強は新卒と中途の採用を軸にするが、特に大学などで情報セキュリティを学んだ若手の採用と育成に注力する。新人育成では、ITとサイバーセキュリティの基礎からスタートし、セキュリティ専門家、ITシステム全般の開発・育成、ビジネスを含むコンサルティングの各領域にキャリアップできるよう座学と現場重視の研修カリキュラムを整備するという。
事業の注力領域は、業界別では自動車や医療、エネルギー、IoT/製造における組み込み機器を含むセキュリティ対策支援や金融向けのコンプライアンスのほか、多業種でのサイバーセキュリティ戦略の策定やIT資産管理、サイバー演習、クラウドセキュリティを挙げる。また、セキュリティデータ処理での人工知能(AI)/機械学習、生産設備などの重要インフラ向けセキュリティ、ブロックチェーンでの技術開発にも取り組むとする。丸山氏は、これらを通じてクライアントニーズに応じたセキュリティの支援にグループ全体で対応していきたいと語る。
新会社が注力するサービス内容と新規の取り組み
特に人材面は、国内外でセキュリティ技術者の争奪戦が繰り広げられ、デロイト トーマツ グループでも人材の確保とその定着が難題だという。
新会社では「国内最高水準の報酬」を強みの一つとして打ち出すが、最高戦略責任者に就任するデロイト トーマツコンサルティング 執行役員 パートナーの桐原祐一郞氏は、「海外ではセキュリティ人材の初任給は1000~1500万円が相場だと理解している。日本ではそこまでは出せないが、報酬動向は常に把握しており、国内最高水準は維持できている」とコメントした。
また、最高執行責任者に就任するデロイト トーマツ リスクサービス パートナーの野見山雅史氏は、「新会社の理念は日本社会の安全を守るという重要な役割を果たすこと。クライアントから報酬を得ることが目的のコンサルティングビジネスではない。人材が中長期的に活躍し、定着してもらえるような理念を大事にしていきたい」と強調した。