企業におけるMLの利用状況
MLを活用した華々しい事例を発表している企業は数多くある。Rolls-Royceは航空機のエンジンにおける摩耗の兆候を検出し、予測メンテナンスを可能にするために、インターネットに接続されたセンサーからのデータを分析しており、Googleは自社データセンターの冷却設備にかかる電力を約40%削減するためにDeepMindのMLを利用しており、Amazonはレジなし店舗「Amazon Go」で買い物客が購入した商品を識別するために画像認識を利用しており、ネットスーパーのOcadoは自動化された倉庫内でのロボットの動きの制御を実施している。
このほか、地味なかたちでのMLの利用は何年も前から実現されている。例を挙げると、より多くの商品購入を促すためにAmazonが採用している、またより多くのコンテンツ視聴を促すためにNetflixが採用しているレコメンドシステムや、Microsoftなどが手がける、オンライン上で発生した脅威の通知を目的とする世界的なセキュリティシステムがある。さらに最近では、投資業務を手がけるCitigroupといった金融機関も詐欺絡みのトランザクションや決済の誤りを検出するためにMLを活用し始めている。
ベンダー各社が既存サービスの機能を拡張するために、MLの持つ驚異的なパターンマッチング機能を使っている点を考えると、あなたの企業でも少なくとも部分的にMLを活用したサービスが既に導入されている可能性は高いだろう。こうしたMLの利用例としては、顧客サポートセンターにおけるチャットボットやその他の自動応答システムで使用される自然言語処理や音声認識、あるいはスパムメールの検出や電子メールの自動文章補完機能がある。実際のところ、O'Reillyレポートの回答者らは、顧客サービス部門とIT部門が社内で最も「AI」を利用していると答えている。
その他の企業もMLを実験的に利用し、従業員による繰り返し作業をモデル化することで、作業の自動化をソフトウェアで実現しようとしている。このRPA(ロボティックプロセスオートメーション)と呼ばれる分野に特化した企業も出てきている。Forrester Researchのバイスプレジデント兼主席アナリストであるJ. P. Gownder氏らによるレポート「Automation, AI, And Robotics Aren't Quick Wins」(自動化やAI、ロボット工学は目先の利益に向けたものではない)では、RPAを利用して資材調達プロセスを自動化しているドイツの製薬会社の事例が紹介されている。