企業はテクノロジーの追加に合わせて進化する文化を築き上げる必要がある。スキルのサポートと向上に向けた文化を創り出さずに、目先の生産性向上を目標にして最適化を実施すれば、長期的なパフォーマンスの持続可能性は望めず、一時的な効率向上に終わることになる。Brauer氏とレポートの共著者らは、AIやRPAといったテクノロジー戦略をより賢明かつ戦略的なやり方で導入するための指針を提示している。自動化やAIの利用をスケールさせ、将来の労働力のニーズを満たす上で、テクノロジー、スキル、多様性、信頼性、レジリエンスという観点で課題を示し、以下のような行動指針を提案している。
並行して運用する:「小さく始めて基礎を築き上げる。RPAを既存の情報システム上で稼働させれば、ITのバックエンドに手を加えず、ほとんど即座に投資を回収できる軽量実装が可能になる。しかし、拡張に向けた基礎を構築する際には、組織全体について考えをめぐらせ、既存の手法を保ちながら新たなシステムを稼働させるユースケースを見つけ出すというかたちになる。そして、人が拡張のメリットを感じ始めるようになった時点で、既存のアプローチから徐々に抜け出すようにする」
新興企業のように行動する:「新興企業は新たなアイデアを試し、それが起業家の考え出した価値を生み出し、実現できるかどうかを見極める。これは、多くのことを実行しながら即座に学習していくという、未知の領域を進んでいく際の優れたアプローチの採用も意味している。小規模な新興組織を社内に作り出すことで、形式的な管理手段によって課される手続きやリスクチェックの重荷から解放され、新たなアイデアを試すために必要な実験に自由に注力できるようになる」
仕事を守るのではなく、人を守る:「作業が人の手から自動化されたシステムに移管されていくとともに、そのシステムを監督する責任は人が担うことになる。アルゴリズムは一般的な文脈における概念化ができないため、人による監督が不要になるわけではない。この新たな責任を履行するうえで、従業員に対して自らの職務内容を変更する権限を与え、繰り返し作業がなくなって生み出された時間の使い方を彼らが決定できるようにしてほしい」
専門となる拠点を作り出す:「こういった拠点、すなわちチームは、組織におけるワークフォースの再教育と、RPA/AIテクノロジーに関するニーズのサポートに尽力する。この専門チームはナレッジベースと再利用可能なソリューションのライブラリーを構築し、企業のどこからでもアクセスできるようにするべきだ」