本連載では、筆者が「気になるIT(技術、製品、サービス)」を取り上げ、その概要とともに気になるポイントを挙げてみたい。今回はいつもと趣向を変えて、ITに関連する気になる調査として、MM総研が先頃発表した「2019年 国内クラウドサービス需要動向調査」を取り上げたい。
既存システムからパブリッククラウドへの移行が本格化
この調査は、国内クラウドサービス市場規模の2017年度(2017年4月~2018年3月)と2018年度(2018年4月~2019年3月)の実績と、2023年度までの予測、および需要動向に関する結果を表したものである。クラウドサービスを導入済み、または検討中の法人計1597社を対象に、2019年5月に実施したアンケートをもとに取りまとめた。
それによると、2018年度におけるクラウドサービス市場全体の規模は約1兆9422億円となり、2017年度の1兆6449億円に比べ18.1%増えた。2023年度には4兆4754億円まで拡大することが見込まれている。(図1)
図1:国内クラウドサービス市場規模の実績と予測(縦軸の単位:億円、出典:MM総研「2019年 国内クラウドサービス需要動向調査」)
このうち、パブリッククラウド市場は2018年度が6165億円で前年度比34.1%増となった。これが2023年には1兆6490億円の市場規模に達し、2018年からの年平均成長率は21.7%と予測している。コストメリットを生かしつつ、柔軟な運用が可能なPaaS/IaaSに、企業の主要なシステムや自社アプリケーション基盤を移行させる動きが目立っているという。
一方、プライベートクラウド市場は2018年度1兆3257億円で、前年度比18.1%増。2023年には2.8兆円に達し、2018年度から2023年度までの年平均成長率は16.3%程度と予測。ただし、オンプレミス型プライベートクラウドの成長率は鈍化する見通しだ。
MM総研によると、パブリッククラウドにおけるPaaS/IaaS市場の成長要因は、ウェブ系のシステム開発や新規システムの基盤としての利用に加えて、オンプレミス環境で利用していた既存システムからの移行が本格化し始めたことにあると見ている。
PaaS/IaaSの用途では「各種システムの移行」という回答が上位に並んだ。「アプリケーション開発基盤の移行」がPaaSの67.6%、IaaSでは54.3%で最も高く、「自社開発(独自)システムの移行」がPaaS 52.3%、IaaS 46.5%と続いた。これまで閉鎖的環境下で使用されていた企業の基幹系業務を担うシステムが、本格的にクラウドへ移行されている動きを反映する結果となった。(図2)
図2:PaaS/IaaSの主な用途(複数回答、出典:MM総研「2019年 国内クラウドサービス需要動向調査」)