リスクとリターンはこれまでになく高まっている
Benaich氏はその例として、3D地図作成のためにBlue Vision Labsを買収したLyftや、リアルワールドモバイルARのためにMatrix Millを買収したNiantic、自然言語処理に関する専門性を獲得するためにBloomsbury AIを買収したFacebook、DeepMindのヘルスケア部門を自社の医療部門に取り込んだGoogleを挙げた。
さらに同氏は、製品にインテリジェントなシステムを組み込む優れたテクノロジー企業が、大規模な資金調達ラウンドを実施できるようになっていると付け加えた。例えばGraphcoreはシリーズDで2億ドルを調達したし、DarktraceはシリーズEで5000万ドルを調達した。またUiPathは、12カ月の間に3ラウンドを実施して10億ドル近く調達している。
自らがこのエコシステムに属しているBenaich氏は、AIコミュニティのために欧州の優れたAI人材をスカウトし、支援することを目的としたベンチャー企業が、まったく新たに設立されていると説明した。その目的は、インテリジェントなシステムによって世界的な競争力を持つ企業を作ることだ。その代表例がAir Street Capitalであり、Benaich氏は自らの役目を果たすために懸命に取り組んでいるようだ。
同氏は、Air Street Capitalのほかにも、「AI技術の研究や応用を手掛けるAI分野の起業家、研究者、運用実務者のグローバルなコミュニティ」であるResearch and Applied AI Summit(RAAIS)を立ち上げた。
Benaich氏によれば、RAAISはこの5年の間に、米国のテクノロジー企業の創業者や幹部(例えばGoogleのFrancois Chollet氏やスタンフォード大学のChris Re氏など)を多数呼び寄せ、ロンドンで初めて話をしてもらったという。また、Graphcore、SwiftKey、Bloomsbury AI、Benevolent AI、LabGeniusといった企業の経営者を早い時期から紹介した。これらの経営者は、大きな成果を挙げるか、自分の会社のイグジットを果たした人物ばかりだ。
さらに、Benaich氏が設立した非営利組織であるRAAIS Foundationは、公共の利益のためにAIに関する教育や研究を支援している。気候変動に取り組むOpen Climate Fixや、プライバシーを守るAIに取り組むOpenMinedは、同組織の後援を受けている。
こうした取り組みをしている理由を尋ねると、Benaich氏は「リスクとリターンがこれまでになく高まっているからだ」と答えた。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。