Benaich氏のロジックによれば、この問題は地政学と密接につながっている。この種の、応用分野を問わずに利用できる「ディープ」な、あるいは「コア」な技術を開発している企業は、AIスタートアップの10分の1ほどにすぎないが、その比率以上の注目を集めており、ベンチャーキャピタル投資の5分の1がそれらの企業に向かっている。
「(例えば半導体などの)『ディープテック』については、今も米国(および韓国や英国などのその他の主要国)が主流を占めている。これは、中国が現在もこの種の技術を輸入に頼っていることを意味している。実際、中国の半導体の輸入額は輸出額の7倍に達する」
Hogarth氏は、「AIのナショナリズム」と題した論考の中で、「当然、中国はこの重大な貿易赤字を解消しようとするはずであり、1400億ドル規模とされるいわゆる『大基金(Big Fund)』は、この赤字を縮小しようとする中国政府の決意を表している。またわれわれは、中国の主要なテクノロジー企業が、今後欧州のディープテック企業の買収を増やすと考えている」と述べている。

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Benaich氏とHogarth氏は同レポートの中でいくつかの予想を示している。そして2018年の予想の中には、今後50億ドルを超える規模の合併・買収が試みられ、その後その試みが阻まれるという内容が含まれている。そうした事態はまだ起こっていないが、同氏らはまだこの予想を捨てていない。Benaich氏は、中国の技術エコシステムは急速に成長していると指摘した。
「特に注目すべきは、このエコシステムがAIファーストのテクノロジー企業の成長を中心に据えていることだ。最近の統計によれば、中国は10億ドル以上の企業価値を持つAIスタートアップの数がもっとも多い国になっている。これらのAIスタートアップの規模拡大のペースは間違いなく世界一だ。
基礎研究の進展度に関しては、a)主要な学術会議で採択される論文の数、b)それらの論文の引用回数、c)計算機科学や計算機工学などの関連する学科を持つ大学の国際ランキングから判断できる。
最初の2つの指標について見ると、世界のAI研究の成果に対する中国の貢献度は急激に高まってきている。一方、3つ目の指標については、今も米国と欧州の大学が世界の大学ランキングトップ20の大半を占めている。とは言え、清華大学と北京大学が、計算機科学・計算機工学のトップ20にランクインしていることも事実だ」