海外コメンタリー

不確実性高まる2020年、IT予算はどうなる?--調査企業のレポートから読み解く

Charles McLellan (ZDNet UK) 翻訳校正: 石橋啓一郎

2019-09-17 06:30

 2016年以降、企業やその他の組織のIT予算に関する議論や予測は、大きな不確実性の中で行われてきた。米国ではこの議論に貿易摩擦やその他の地政学的な緊張関係が作用している一方、欧州では、いまだ解決されていない英国の欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)の問題が、英国の経済見通しに暗い影を投げかけている。

 国連経済社会局の経済分析および政策部は、「世界経済状況・予測」2019年央報告書で、2019年の世界の総生産の成長率見通しを2.7%に引き下げた(2017年の成長率は3.1%、2018年は3.0%だった)。また、2020年の世界総生産の成長率は、2.9%と予想されている。

世界経済の成長率は2.7%に引き下げられた
出典:「世界経済状況・予測」2019年央報告書

 同報告書には「この経済成長の減速は、部分的には一時的な要因を反映したものだが、下振れのリスクは引き続き高止まりしている。貿易摩擦の長期化は、投資の縮小や生産ネットワークの混乱などを通じて、大きな波及効果を及ぼす可能性がある」とあり、さらに次のように続けられている。「これらの持続的なマクロ経済リスクは、気候変動の影響加速による自然災害の頻度と規模の増大によって一層大きくなっている」

 最近では米中間の貿易摩擦が大きなニュースになっており、その多くが華為技術(ファーウェイ)と、同社の5Gネットワーク機器に関して申し立てられている安全保障上の脅威に関するものだ。ただし、米国はEUも標的にしており、鉄鋼とアルミニウムに追加関税を課したほか、航空機部品や一部の食品にも関税を課す可能性があると脅している。脅威は増える一方だ。Trump大統領は、米国時間8月2日に米国とEUが牛肉の貿易拡大で合意した際、「またわれわれは、わが国に輸入されているすべてのMercedes-BenzとBMWに対し、25%の関税を課すという合意について欧州連合と交渉している。われわれはこれに感謝する」と発言したあと、「これはほんの冗談だが、彼らは少し心配し始めたようだ」と付け加えた。

 今回の国連の報告書では、米国の姿勢以外の要因についても指摘しており、「欧州では信頼感の低下、域外需要の減少、ブレグジット問題の展開によって不確実性が長引いていることなどが原因で、経済活動が活力を失うだろう」と述べている。

 7月にはTheresa May氏の後任としてBoris Johnson氏が英国首相に就任したが、不確実性は当面解消されないだろう。本記事執筆時点(8月中旬)では、Johnson政権は離脱合意の有無に関わらず、10月31日までにEUを離脱する意思を固めているように見える(Johnson首相は「死ぬ覚悟でやる(do or die)」という表現で意思を示している)。英国政府の予算責任局(OBR)は最近、合意なき離脱は同国経済を景気後退に追い込むという予想を発表し、その場合「2020年~21年以降、借金が年間約300億ポンド(約4兆円)増加し、2023年~24年までに債務残高がGDPの約12%相当増加する」と指摘した。

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