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SAP、日本の政府機関向けシンクタンクを発足--社会課題の解決支援に全力

大河原克行

2019-09-09 06:00

 SAPジャパンは9月6日、「SAP Institute for Digital Government(SIDG=シッジ)」を設立し、本格的な活動を開始したと発表した。SIDGは、日本でのデジタルガバメントの推進や社会課題解決に向けて、公共機関との活動を強化するための官民協創型シンクタンク。グローバルでは、2015年6月にオーストラリアのキャンベラに本拠を置く形で活動を開始し、既に欧州、米国、韓国でも活動している。

 同社では、民の力を官に生かし、官の政策に沿って民がビジネスを創生するといった日本型のデジタルイノベーションのフレームワークに則った、社会と産業、公共機関をつなぐエコシステムを完成させ、経済発展と社会課題の解決の両立に貢献したいとしている。

SAP Institute for Digital Governmentの取り組み
SAP Institute for Digital Governmentの取り組み

 日本では東京・大手町の「SAP Leonardo Experience Center Tokyo」を本拠地として、新規技術やビジネスの知見を活用して社会課題の解決策を見いだす「Thought Leadership」、政府のデジタル化を推進して公共機関のイノベーションを図る「Digital Transformation」、政府が海外の政府の知見を参考にしながらそれを活用するためのハブとして機能する「Collaboration with Global」に取り組む。また、SAPが取り組むイノベーション組織をつなぐオープンコミュニティー「Business Innovation Network」や、スタートアップ向けプログラム「SAP.iO」などとの連携、SAPのグローバル組織との連携を通じて、公共機関のデジタルイノベーションによる価値創出を図る。

 「Thought Leadership」では、オープンデータの利用促進、デザインシンキングやIT人材、官民交流などを通じたイノベーション人材の教育、官民協創によるビジネスイノベーションや社会課題の解決、デジタルエコシステムを利用した価値創造に取り組む。ここでは「2020 日本の夏をリザデサンする」をテーマに、熱中症ゼロ社会を実現するオープンデータ活用ビジネス創出アイディアソンの開催や、沖縄県における混雑や交通渋滞問題の解決、観光のスマート化、分散化を行う「沖縄県データドリブン観光プラットフォーム」、自然災害への対応を深化させるための「大分大学/大分県EDISON」などの取り組みがあるという。

 「Digital Transformation」では、先進技術を活用した政府情報システムの将来像に関するロードマップの具体化、行政におけるデータ管理の高度化、デジタルガバナンスを実現するプラットフォームの強化、デジタルインフラの活用促進のほか、ビッグデータ分析、予知分析を活用することで実践的な「EBPM(Evidence Based Policy Making)」を実現する。また、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、マシンラーニングなどの先端技術を用いた行政サービスの利便性向上、デジタルガバメント向けデモを用いた体感型ワークショップの実施などにも取り組む。

 デジタル変革で実現する世界をバーチャル体験できる「イマーシブエクスペリエンスデモ」、データ駆動型行政の意義や価値を体感できる「デジタルキャビネットデモ」などの取り組みもある。

 「Collaboration with Global」では、諸外国政府におけるデジタル戦略、情報システムを利用したサービス改革などの事例紹介、諸外国事例の視察や情報交換、海外にある「AppHaus」やSIDGの見学、他国の政府機関などと情報交換を行う。具体的には、エストニアにおける対話型予算編成、米国インディアナ州のデジタルキャビネット、オーストラリアクイーンズランド州のマシンラーニングによる税徴収などの事例を挙げた。

SAPジャパン デジタル社会基盤事業統括本部公共担当ディレクター SIDGリードの横山浩実氏
SAPジャパン デジタル社会基盤事業統括本部公共担当ディレクター SIDGリードの横山浩実氏

 SAPジャパン デジタル社会基盤事業統括本部公共担当ディレクター SIDGリードの横山浩実氏は、「日本のデジタルガバメントの実現では、ガラバゴス化することを避けるべきであり、グローバルで連携することが大切。海外の成功を事例にしながら、グランドデザインをしていくことが必要だ」と述べた。

 また、その一方で日本の知見を海外に発信することも大切だとし、「“出島”の役割を果たすSAP Leonardo Experience Center Tokyoで、官民協創による体験、発想、実証を通じた価値の創造を行っていく」とした。SIDGにおいては、明確な根拠に基づく効果的な施策遂行やデータ駆動型行政の実現、2030年を目標とした政府システムグランドデザインの構築支援、地域経済の持続的発展を可能にする地方創生を含めたスマートシティーの3つの重点テーマから取り組んでいくとしている。

SAPジャパン 代表取締役会長の内田士郎氏
SAPジャパン 代表取締役会長の内田士郎氏

 またSAPジャパン 会長の内田士郎氏は、デジタル技術を徹底的に活用した官民協創による社会全体の効率化や、日本型デジタル変革フレームワークを用いた社会課題解決支援が重要になっていると指摘し、「SAPは、グローバルではガバメントに強く、オーストラリア、シンガポール、エストニアなどにも導入されているが、日本の中央省庁への導入実績はない。だが、SAPがERP(統合基幹業務システム)を祖業とした会社からイノベーションの企業に変わることで、社会課題の解決につながり、日本の政府に貢献できる。デザインシンキングなどの手法を用い、課題を導き出し、課題を解決する上で、結果としてSAPのソリューションを使ってもらいたいと述べた。

 加えて同氏は、「ERPを売りたいとは考えていない」とし、共創でビジネスを形作るアプローチに注力しながらイノベーション創出企業として日本の政府のイノベーションを推進したいとの抱負を語った。「SAPジャパンは2年前に15人体制で公共統括本部を設置し、リアルタイムビッグデータ、グローバル知見、社会課題解決という特徴を生かしながら、デジタルガバメントの推進を支援してきた。現在では35人体制となっている」(内田氏)などと説明した。

SAP Global Lead -SAP Institute for Digital GovernmentのIan Ryan氏
SAP Global Lead -SAP Institute for Digital GovernmentのIan Ryan氏

 SAP Global Lead -SAP Institute for Digital GovernmentのIan Ryan氏は、社会課題が山積する一方で、その内容も刻々と変化する状況に、「先進技術と最新の知見、ソートリーダーシップを組み合わせ、現実社会の複雑な課題に取り組むことで、価値あるデジタルガバメントを提供する」と表明した。海外での実績を日本の環境に合わせて活用しながら、「スマートシティーやSociety5.0などを切り口に、イノベーションの促進、政策立案支援、知の基盤の確立、ネットワーキング効果という4つの観点から活動を強化したい」などと話した。

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