茨城県のつくば市は、超過勤務時間の削減を目的にロボティックプロセスオートメーション(RPA)ツールを導入して効果を生み出しているが、どのようにして導入を成功させているのだろうか。導入のポイントを明らかにした。
RPA導入の経緯
つくば市は、茨城県の南西部に位置し、人口がおよそ23万5000人。つくばエクスプレスの開業により、沿線自治体の人口は増加傾向にあるが、つくば市も同様だという。研究者(2万人)や外国人(9500人強)、学生が多いという特徴があり、転入や転出、パスポート申請など、市民窓口課の繁忙期が複数存在するという。
また、税の申告時期になると、同市役所の申告相談会場には多くの人が訪れ、市職員が1万件超の申請を受けることになると、つくば市総務部ワークライフバランス推進課係長を務める三輪修平氏は、NTTグループが8月28日に開催した記者説明会に登壇して述べた。
三輪修平氏
その一方で、民間企業に向けて労働基準法が改正されたのと同様に、「つくば市職員の勤務時間、休暇等に関する規則」が2019年4月に改正された。「1カ月において時間外勤務を命ずる時間について45時間」「1年において時間外勤務を命ずる時間について360時間」と定められ、繁忙期のマンパワー不足による超過勤務時間の削減が課題となったという。
さらに、少子高齢化に関連した問題の対応策を検討する総務省の「自治体戦略2040構想研究会」の第2次報告では「今後、東京圏でさえも人口減少が見込まれる。全ての自治体において、若年労働力の絶対量が不足し、経営資源が大きく制約される」ため、「従来の半分の職員でも自治体として本来担うべき機能が発揮でき、量的にも質的にも困難さを増す課題を突破できるような仕組みを構想する必要」があると記されている。
その結果、「全ての自治体で業務の自動化・省力化につながる破壊的技術(AIやロボティックス、ブロックチェーンなど)を徹底的に使いこなす必要がある」(同報告書)ことが求められているという。
そのため、つくば市では、NTTデータとRPAに関する共同研究を「つくば公共サービス共創事業-つくばイノベーションスイッチ-」の一環として開始した、と三輪氏は説明する。同事業は、ITで業務効率化などに役立つ製品やサービスの創出に結びつけるため、民間事業者との共同研究を実施する取り組みだ。
実際の効果としては、作業時間が79.2%削減されたという。「自治体でRPAが適用できる業務については、8割減という数字が出てくる。結構革命的な数字と思っている」(三輪氏)。同研究に関する詳細は、つくば市のサイトに掲載されている実績報告書で見ることができる。
RPA導入の効果として、直接的な作業時間の削減がまずは挙げられるが、業務フローが自主的に改善されるようなったことが興味深かったと三輪氏。RPAの導入によって業務負荷が軽減されることを現場の職員が経験すると、さらに効率化できないかと考えるようになるという「こちらか指示を出さなくても業務フローを改善してくれる部署が増えてきた」と同氏は述べる。
さらに、生産性や精度の高い業務に取り組めるため業務の質が向上し、ミスが減ることによりトラブルも減少すると効果もある。「何時までに業務を終了させる」という時間制限だけを目指すのとは異なる真の働き方改革にはRPAが不可欠とつくば市は考えている。
その結果、同市では2018年10月、NTTアドバンステクノロジのRPAツール「WinActor」の正規ライセンスを導入した。