1月から8カ月にわたる連載も今回が最終回です。この連載を通して、読者の皆さまが無事Windows 10の運用を始められていたら、それに勝る喜びはありません。さて最終回では、今後のPC運用管理の在り方そのものと言える「Device as a Service」という概念について解説したいと思います。少し未来のお話です。
そもそも、ここまでIT管理者を苦しめるWindows 10の「Windows as a Service」にある「as a Service」とは何なのでしょうか?
「as a Service」は、直訳すると「サービスとしての」という意味になります。「サービスとしてのWindows」は、従来のパッケージ製品という「モノ」として売られていたWindowsを、サービスとして提供するというコンセプトです。でも、「“サービスとして”ってそもそも何?」と思う人は多いでしょう。
「Software as a Service(SaaS)」に始まり、「Platform as a Service(PaaS)」「Infrastructure as a Service(IaaS)」など、もう10年以上前からIT業界に存在する「as a Service」という言葉、この「サービスとして提供する」とはズバリ、ユーザーが運用する必要のない「運用された状態として提供される(され続ける)」ことを意味します。提供されたモノは従来、運用が必要でした。日々メンテナンスを行い、問題があれば対応し、老朽化が進めば更新もしくは廃棄します。この一連の運用は、モノを使い続ける限り繰り返されます。そのため、「LCM(Life Cycle Management)」と呼ばれることもあります。
ビジネスにとってITの重要性は増すばかりで、導入されるシステムは増え続けています。その結果、IT管理者はこの運用に膨大な労力とコストを支払わざるを得ない状況へと追い込まれました。その状況を打破すべく生まれたのが、「as a Service」です。「運用された状態として提供される(され続ける)」ことで、IT管理者を運用から解放します。モノとして提供されるから運用が必要である――ということで、運用が必要ではない(運用された状態を)サービスとして提供しようというのがこの「as a Service」の考え方です。
具体的にWindowsに話を戻して、このことを当てはめてみましょう。繰り返される運用は、Windowsで言うならば、Windows XPを使い始め、日々アップデート(KB)を当ててメンテナンスし、サポート終了が来ればWindows 7に乗り換える、ということです。今まではIT管理者が行っていました。
これがWindows 10になるとどうなるか。品質更新(Quality Update=QU)が日々のアップデートメンテナンスで、機能更新(Feature Update=FU)が新しいWindowsへの移行に当たるわけです。これがユーザーに直接提供され、管理者の手を煩わせることなく、運用のサイクルが自動で回る――これが「Windows as a Service」で、Microsoftが描いた新しいWindowsの在り方でした。
ここまで読んできて、「あれ? でも管理者が楽になっていないような……」。そう思った人が大半だと思います。これは致し方ないのです。なぜなら、PCの環境がまだ過渡期だからです。
「Windows as a Service」を阻む障壁は3つあります。「アプリケーション」「ネットワーク」「デバイス」がまだダイレクトに、ユーザーにサービスを提供することには耐えられる構造となっていないのです。