Tim O'Reilly氏は、テクノロジーの世界の吟遊詩人であり、コンピューティングの過去、現在、未来を語る叙述詩人だ。同氏に何かを尋ねれば、思索の結果をつづった言葉が長々とあふれ出す。
例えば、現在の人工知能(AI)は、O'Reilly氏の出版社が出版してきた書籍で詳しく記録されてきた新たな動きである、オープンソースソフトウェア革命よりも大きな変化なのだろうか?
O'Reilly氏は、「それは興味深い質問だ」と言うと、その問いに答える前に、そもそも人工知能以上の大きな変化が起こっていると語った。
提供:Tiernan Ray
「私の考えでは、長期的に見れば、この機械の自律性に関する変革は、基本的に機械が人間と交わって生まれたハイブリッドな存在による変革だ。AIを人間と分けて語る人もいるが、興味深い機械はすべて人と機械のハイブリッドだ。機械はこれまでも常に人間の能力を増幅するものだったし、人間と機械の共生関係は、おそらくインターネットよりも、オープンソースよりも大きなトレンドであり、AIはその現れの1つにすぎない」(O'Reilly氏)
この世界では古参であるO'Reilly氏はいつも、単なる高尚な理論ではなく、テクノロジーの世界で実際に起こっていることを元に、意外な角度からの大胆な考察を披露する。同氏は数十年に渡って、下手な未来学者や批評家よりも、プログラミング言語やソフトウェアの「スタック」から生まれてくるものを見つめ、理解しようとしてきた。同氏は常に、何かを批判するのではなく、すべてを見渡し、何が長く続き、重要なのかを指摘する。
そのような思索のきっかけになるのは、多くの場合非常にありふれたことだ。今回の場合、それは有名なO'Reilly氏の出版社がニューヨークで開催したカンファレンス「Strata」の傍らで、米ZDNetの記者と同氏が交わした会話だった。
O'Reilly氏はこの日、ステージに上がって、IBMでデータや人工知能に関する取り組みの責任者であるRobert Thomas氏と一緒に、Thomas氏の記事について議論した。この「The AI Ladder」(AIのはしご)と題した記事は、企業の経営者に対して、AIの導入についてどう考え始めたらよいかを説明する簡単な記事だ。