Microsoftは10月15日、同日千葉県の幕張メッセで開幕した「CEATEC 2019」の特別基調講演に登壇し、大成建設およびNXPジャパンとの協業を発表した。また講演では、の人工知能(AI)に関する取り組みや国内事例を紹介したほか、「Windows for IoT」の再ブランドの構築、「Windows Machine Learning(Windows ML) コンテナ」や「SQL Server IoT 2019」を披露した。Windows ML コンテナの実装は2020年、SQL Server IoT 2019は2019年末までに提供を開始する。
同社がIoTビジネスに注力し始めたのは5年前の2014年にさかのぼる。Microsoft Azureを中核としたIoTソリューションやパートナーエコシステムによる協業で、IoTビジネスの醸成を目指してきた。「Society 5.0を実現するIntelligent Edge Intelligent Cloud」と題した講演で米Microsoft IoT and Mixed Reality Sales Vice PresidentのRodney Clark氏は、「AIはSociety 5.0の中心」と語り、大成建設との協業もWindows 10 IoTやAzure、Office 365を中核としたソリューションだと紹介した。
協業を発表したMicrosoft IoT and Mixed Reality Sales Vice PresidentのRodney Clark氏(左)と大成建設 営業総本部 ソリューション営業本部 常務本部長の岩田丈氏
大成建設 営業総本部 ソリューション営業本部 常務本部長の岩田丈氏は、「業種業態の垣根を越えた共創が必要」と説明した。同社は7月に、ソリューション営業本部直下に120人規模のAI・IoTビジネス推進部を設立。その直下にAIやIoTを活用したビジネスモデルの構築を目指すデジタルビジネス開発室、プラットフォームの構築や協業検討を担うプラットフォームデザイン室、営業戦略の立案を行う企画管理室を組成している。
また同社は、設計竣工後の45年という長期期間に着目して、3つの新規ビジネスを披露した。1つは「MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)」センサーを用いたものになる。構造物の挙動を測定し、その結果から健全性を評価する「T-iAlert Structure」を竣工後のビルに導入、「地震発生直後の建物健全性把握システム」を通じて、災害後の早期復旧に向けた活動支援を行う。担当者は「以前は専門家が危険度判定を行うため、相応の時間を要した。IoTの活用で人の労力や判断を介さず、短時間で定量判定が可能」と説明した。同社は100万円前後で導入できるようコストダウンに着手しており、数年内で1000棟の導入を目指すという。
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2つめは施設・資産業務に要する情報を台帳化して一元管理する「CAFM(Computer Aided Facility Management)」と、建築物の構成要素を3Dデータとして配置し、施設情報を再現する「BIM(Building Information Modeling)」を活用した次世代の管理ソリューション「施設統合運営管理システム」になる。大成有楽不動産らのグループ企業と連携し、オフィスビルの長期修繕計画やエネルギー管理、施設予約といった他のサービスの連携を行う。2020年度の事業化を目指しており、「Microsoftの米国本社で導入したMicrosoft Smart Building Solutionsを活用している。日本マイクロソフトとともに設計施工運営管理のビジネスパッケージ化」(岩田氏)も視野に含めている。
3つめは、従業員の生体データや位置データ、作業環境データに着目した「生産施設従業員の作業状況の可視化システム」。生産工場における品質向上と効率化を目的として、統合的な分析を行うソリューションになる。熟練者と新人の動きを比較した行動の最適化や、従業員の負担を可視化して効率化を図るという。2020年度の事業化を目指しつつ、ビッグデータとの連携で工場の最適化を目指す。
Microsoftは、IoT用OSとして、スマートデバイス向けの「Windows 10 IoT Core」、フル機能を備える「Windows 10 IoT Enterprise」、高負荷のワークロード向けとなる「Windows Server IoT 2019」をラインアップする。講演の中で米Microsoft Partner Program ManagementのIan LeGrow氏は、「時間、セキュリティ&トラスト、モダナイゼーションのアプローチで構成されたIoTソリューション群を包括する『Windows for IoT』だ」と紹介した。その理由について同氏は、「特定の製品ではなく、Windows for IoTにして幅広いサポートや製品を提供の意味を込めている。ブランド再構築で顧客とも話しやすくなった」と語った。
SQL Server IoT 2019は、このWindows for IoTファミリーに新たに加わった。同社は、サーバークラスのハードウェアとストレージが必要な非接続型・低遅延のエッジシナリオに最適だとアピールしている。この他にもWindows上で機械学習推論を提供するAPIセットの「Windows ML コンテナ」がプレビューに達したことも明らかにした。
Windows 10、Windows 10 IoTプラットフォーム、Azure IoT Edgeの組み合わせシナリオを想定。現在はWindows 10 20H1として開発が進んでおり、2020年の実装を予定している。
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また、NXP Japanとの協業は、同社製品のi.MX6、i.MX7、i.MX 8M、i.MX 8M Miniを含むNXP i.MXプロセッサーファミリー向けWindows 10 IoT Core Board Support Packagesの一般提供となる。既に10種以上のNXPベースのボードを用意しており、「グローバルでは100社以上のパートナーがトレーニングを受けている。このソリューションベースでビジネスの拡大を期待している」(NXPジャパン 代表取締役社長の原島弘明氏)と、産業別の顧客を対象としたビジネスに注力することを表明した。
協業を発表したMicrosoft Partner Program ManagementのIan LeGrow氏(左)とNXPジャパン 代表取締役社長の原島弘明氏