英国の欧州連合(EU)離脱が僅差で決まった国民投票から3年以上にわたって、同国のテクノロジー企業は、ブレグジットが自分たちに与える影響を見極めようとしてきた。
一部の企業は時間と手間をかけてサプライチェーンを見直し、業務を国外に移した。また、不確実性が大きすぎて管理できないと判断して、ほとんどすべてのことを無視すると決めた企業もある。
ブレグジットのプロセスはようやく(まだ予断を許さないが)最終段階に入ったとの見方もあるが、過去3年間のプロセスは、実際にEUを離脱する前から、明らかに英国のテクノロジー業界に大きくかつ長期的な影響を与えた。
テクノロジー業界がブレグジットにどう対応したかが重要なのは、それらの企業家や起業家が、あらゆる経済圏が切望している高給の仕事を生み出す能力を持っているためだ。
また、テクノロジー業界の労働者の仕事は場所を問わないものが多い。需要の高い技能を持った労働者は、どんな場所でも働くことができるため、ブレグジットの影響は、まずこうした人々に現れてくる可能性が高い。さらに、英国のデジタル産業部門の輸出先は、その半分近くをEUが占めているため、政府がブレグジットの課題を最終的にどう解決するかは、この業界にとって極めて重要な問題だと言える。
米ZDNetは10月までにさまざまな規模の、さまざまな発展段階にあるテクノロジー企業に話を聞き、ブレグジットのプロセスがそれらの企業にどんな影響を与えたかを調べた。
「今後の仕事は、この英国ではなくマデイラで生まれる」
オープンソースソフトウェア企業のPayaraは、ポルトガルのマデイラ諸島に新たなオフィスを開設し、そこに開発チームを置いた。
PayaraのJulia Millidge氏
提供:Payara
同社の創業者Steve Millidge氏は、「これはもちろんブレグジットに対応するためだ。2つの事業会社を維持するのは煩雑であり、われわれはそれを望んでいなかった」と話す。同社の顧客は主に英国外で、スタッフの多くは欧州各国の出身だ。
人事・業務担当マネージャーを務めるJulia Millidge氏は、同社はマデイラで進める新規プロジェクトのために人材を集める予定であり、Millidge氏も1年のうち6カ月間はここに住むと述べていた。
「われわれがスタートする予定の新規プロジェクトには、技術関係のものや、マーケティング関係のものがあり、営業関係のものも立ち上げる可能性があるが、これらの仕事はこの英国ではなくマデイラで生まれることになる」とMillidge氏は語った。
同氏は、英国で作られるはずだったが、実際には作られなかった仕事がどれだけあるかは計り知れないと話す。
「われわれは、(ブレグジットがなければ)おそらく開発プロジェクトを英国で立ち上げていただろう。そうしない理由はない。今まで通りに続けていたはずだ。しかしブレグジットのために、この国の人々は得られたはずのそのチャンスを得られなくなってしまった」とMillidge氏は述べた。
「私はこれをブレグジット税だと考えている」
サイバーセキュリティ企業のSecureData によれば、金融機関がブレグジットへの対応として英国から欧州に事業を移すのにあたり、ネットワークを分離するのを支援する新たなビジネスが出てきているという。しかし他業種の企業は、支出に対してより慎重な態度を見せている。