HPE Aruba、中小企業向け無線LANの新ブランドを発表--国内外で競合多数

渡邉利和

2019-10-28 10:21

 Hewlett Packard Enterprise(HPE)傘下のArubaは10月25日、小規模オフィスや店舗などスモールビジネス向けに設計したネットワーク機器製品群「Aruba Instant On」の国内展開を開始すると発表した。新製品は無線LANアクセスポイント(AP)で屋内用天井/壁取付け型の3モデル(Instant On AP11、同12、同15)、屋内用据え置き型の1モデル(Instant On AP11D)、屋外用の1モデル(Instant On AP17、発売予定)の計5機種。SB C&Sとダイワボウ情報システムがメインディストリビューターとなり、10月下旬に出荷を開始する予定だ。

HPE Aruba バイスプレジデント スモール&ミディアムビジネス事業統括のAmol Mitra氏
HPE Aruba バイスプレジデント スモール&ミディアムビジネス事業統括のAmol Mitra氏

 Instant Onの概要を説明したバイスプレジデント スモール&ミディアムビジネス事業統括のAmol Mitra氏は、元々はエンタープライズ向け無線LAN AP製品で成功を収めた同社が新たに、中小企業向け製品に参入するに当たってサブブランドとして「Instant On」という名称を付けたと述べた。その理由として、「特に使いやすさ(Easy to Use)に注力していることを示す、ユーザーに対するブランドとしての約束(Brand Promise)だ」と語り、「シンプル、セキュア、スマート」の3点が特徴だとした。

日本ヒューレット・パッカード 執行役員 Aruba事業統括本部長の田中泰光氏
日本ヒューレット・パッカード 執行役員 Aruba事業統括本部長の田中泰光氏

 国内での販売戦略について日本ヒューレット・パッカード 執行役員 Aruba事業統括本部長の田中泰光氏は、Arubaのビジネスがこの3年ほど毎年30%増というペースで成長を続けているとした一方、この成果は主にエンタープライズ市場でのことだとし、中小企業向けビジネスで同社はチャレンジャーの立場だとした。日本市場特有の事情としては「国産ベンダーが大きなシェアを持っていること」(田中氏)を挙げた。

 製品面では、IEEE 802.11ac WAVE2に対応し、屋内用天井/壁設置型ではMIMO(Multi-Input/Multi-Output)タイプが、2x2:2、3x3:3、4x4:4の3タイプを用意する。店舗などでニーズのある従業員向けの業務用ネットワークと顧客向けのゲストネットワークを分離し、それぞれのサービスを提供する機能をサポートするほか、スマートメッシュセットアップをサポートし、有線LANが確保できない場所にAPを追加して無線範囲を拡大できる。

 エンタープライズ向けAPでサポートされるコントローラー機能が省略される代わりに、モバイルアプリケーションによる簡単なセットアップが可能。モバイルアプリケーションの日本語化は、日本ヒューレット・パッカードの日本人スタッフが担当し、日本市場向けに小型のACアダプターを採用するなど、日本市場向けにカスタマイズしているという。

 国内では、4月にシスコシステムズがクラウドベースで容易な設定/管理ができる点を特徴とする中小企業向け無線LAN AP製品「Meraki Go」”を発表している。Aruba Instant Onは、Meraki Goと機能的にもよく似ており、米国では直接競合製品と位置付けられるようだが、田中氏は「(Merakiを)横目では見ているが、直接競合するとは考えていない」とした。その理由は、「MerakiもArubaもチャレンジャーの立場であり、挑む相手は国産メーカーになる」(田中氏)ためだという。

 Mitra氏は、Instant Onの重要な特徴の1つだとして、「サブスクリプション型ではなく、ライセンスも不要。購入後に追加コストが発生することはない」という点を強調した。これは、Meraki Goがサブスクリプションモデルを採用していたことを念頭にしたようだ。ただ、Meraki Goサブスクリプションは10月9日で廃止されることが発表されている。

 この点をMitra氏に尋ねたところ同氏は、「Merakiがサブスクリプションを廃止したのは、Aruba Instant Onに比べてコストが高くなるという市場の声に応えたものだろう。確かにサブスクリプションではなくなったが、一部機能では別途ライセンスが必要になる部分が残っているため、コスト面ではいまだにInstant Onが優位だと考えている」と答えた。

Instant Onの差別化ポイント(出典:HPE Aruba) Instant Onの差別化ポイント(出典:HPE Aruba)
※クリックすると拡大画像が見られます

 また、「米国市場ではエンタープライズ市場での知名度の高さが生きる形で中小向けでもArubaのプレゼンスが高い。また、Merakiは米国内のクラウドと連携して動作するが、Instant Onはクラウドを使わず、モバイルアプリケーションとAPが直接通信するため、日本では低遅延の面で有利だ」と述べた。

 中小向け無線LAN機器市場は、グローバルではシスコとArubaが競合するという構図だが、国内では米国メーカーの2社と国産メーカーが競合するという構図もある。この二重の競合環境の中で、Aruba Instant Onがどのような展開を見せるのかが注目される。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ZDNET Japan クイックポール

所属する組織のデータ活用状況はどの段階にありますか?

NEWSLETTERS

エンタープライズコンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]