前回は、企業・団体や従業員が炎上に巻き込まれた場合に取るべき「炎上対応策」を紹介しました。今回は、従業員が炎上に巻き込まれたときのリスクや、従業員一人ひとりが行うべき「炎上予防策」について解説します。
実は、「従業員一人ひとりによる炎上予防策」は、全ての企業が力を入れるべき重要施策です。理由は以下2点です。
- 従業員が炎上に巻き込まれると本人に一生のダメージが残ってしまう → 従業員を炎上から守るには「予防」こそが重要
- 従業員が炎上に巻き込まれると企業も炎上するリスクが高い → 従業員を炎上から守ることが、企業を炎上から守ることにつながる
この回の内容を参考に「従業員向けSNS利用ガイドライン」を作って社内に配布したり社内勉強会を開いたりして、「全社員のモラル&SNSリテラシーの向上」にお役立ていただけたら幸いです。
従業員が炎上に巻き込まれると
従業員が炎上に巻き込まれると、どんな状況が起きるのでしょうか。個人のSNSアカウントが存在する場合には、そこに非難や中傷が殺到します。さらに当人のSNSアカウントや投稿が広く拡散された結果、個人情報の流出やなりすまし(偽物アカウント)などのトラブルにも巻き込まれるリスクが高まるでしょう。
中でも怖いのは、当人の本名や顔写真、勤務先、住所などの個人情報が特定され、SNSに投稿・拡散されてしまう「さらし行為」です。
個人情報が特定されてしまうと“ネットリンチ”状態に陥りやすくなる上、家族や友人まで特定され、最悪の場合はその個人情報までさらされてしまうリスクがあります。
炎上の被害はインターネット上だけではとどまりません。当人の住所が特定されてしまえば、自宅の写真が次々と投稿されたり、ストーカーまがいの行為に及ぶ者が現れたりして、日常生活にも支障をきたす危険性が高まります。最悪の場合には、引越・転職・転校をせざるを得ない深刻な事態にも陥りかねないのです。
デジタルタトゥーは一生消えない
「たとえ匿名で行ったSNS投稿や何気ない写真からでも、個人情報は比較的簡単に特定されてしまう」――、まずはこのような厳しい現実を従業員全員が理解しておくことが大切です。
さらに、「一度でもインターネット上に投稿された情報は半永久的に消えない」のです。元の投稿を削除しても、世界のどこかの見知らぬ第三者にコピーを取られたり、画像で保存されたりしたものが忘れたころに再び投稿されたりして、ほぼ永久にインターネット上に流れ続けるのです。「デジタルタトゥー」という言葉を一度くらいは耳にしたことがあるでしょう。
SNSをはじめインターネットはとても便利で楽しいものですが、こうしたリスクもあることを決して忘れてはなりません。
だからこそ、慎重さが失われやすいとき(例:酔っているときや眠いとき、気分が落ち込んでいたり高ぶっていたりするとき)には、「SNSを使わない」「スマートフォンにさわらない」ことを徹底するくらいの心持ちが必要です。
従業員の炎上は、所属企業の炎上に通ず
従業員が炎上に巻き込まれると、当人が所属する企業・団体・学校などにも影響が及びます。当人の同僚、上司、部下、取引先が特定されて炎上に巻き込まれるリスクもあります。
個人の不祥事がきっかけの炎上が、企業・団体そのものを揺るがす規模になると、被害はより甚大なものになります。不買運動が起きたり訴訟などの法的トラブルに発展したりすることで、売り上げや株価は下落し、企業イメージも低下。最悪の場合、倒産してしまうことすらあるのです。
<炎上によって所属企業が受けるダメージの例>
- 不買運動・訴訟
- 売り上げ・株価の下落
- クレーム対応・商品回収や返金対応などによるコスト増
- 求人応募者の減少・内定辞退者の増加
- 信用失墜・ブランドイメージダウン
- 倒産
それでは、次ページから「従業員ができる炎上予防策」を具体的に紹介していきましょう。