ガートナー ジャパンは、新型コロナウイルスの感染流行に伴う企業でのテレワーク導入が本格化しているとして、その導入や拡大における注意点と解説を発表した。
同社が2017年11月時点で実施した調査では、従業員2000人以上の企業のテレワーク整備率は8割近くあり、新型コロナウイルスの緊急対策として一気に実施に踏み切れたところがあるとする。だが、テレワークの運用や勤怠管理の実施方法などに関する問い合わせも寄せられているという。
テレワークの導入展開について同社は6つのレベルを定義する。アナリスト兼バイスプレジデントの志賀嘉津士氏によれば、働き方改革関連法により多くの企業がテレワークを採用する一方、最も多いのは6つのレベルのうちレベル1(オフィスワーカー全般における個人作業の持ち帰り。特にコラボレーションをしない)に相当する企業だとしている。
テレワークにおける実施段階、出典:ガートナー(2020年3月)
同氏は、「単にアプリケーションの導入・使用だけでは不十分。ビジネス文化や習慣、マネジメント層の意識改革も求められ一朝一夕に成功するものではない。緊急時にこそ企業はテレワークの本質を理解し、いかにすればスムーズに実施できるかを考える必要がある」と指摘する。
加えて、「緊急時は平常時のように難易度の低いものから難しいものへと時間をかけて進める必要はなく、整っている部門や拠点ならハイレベルな施策を早期に実施できる。個々の対象ごとに状況やリスクを評価し、可能なところから速やかに着手すべき」ともアドバイスしている。
テレワークの取り組みがうまく行かない主な要因として同社は、以下の5つの課題を挙げている。
課題1.資料が自宅から閲覧できない
テレワークを本格的に進めるには、早急に優先順位を設け、必要な文書からデジタル化したり、この機会にペーパーレスを推進したりするなど、継続的に取り組む姿勢が求められる。自社のセキュリティポリシーの運用状況を確認し、場合によっては、緊急措置として期間を限定した弾力的な運用も視野に入れるべき。
課題2.ビデオ会議の品質が安定しない
画面が乱れる、音声が途切れる、ハウリングで聞き取りにくい、といった不安定な状況では、人は集中力を維持できなくなる。当座の対策としては、ウェブカメラをオフにして音声や資料共有の通信帯域を優先させる、音声のみ電話回線を利用するなどが考えられる。将来的にネットワークの通信容量の見直しや品質面で実績・定評のあるツールを精査すべき。
課題3.コラボレーションツールの使い方が分からない
緊急時は、IT部門のヘルプデスクに問い合わせが集中することも想定される。防ぐために組織内でITに詳しい人、特定のシステムに詳しい人などをあらかじめ特定しておき、簡単な使い方などは組織内で完結するような態勢を取ることが望ましい。FAQを用意してポータルに掲載したり、eラーニングやオンライン説明会などを通じて、ツールの効果的な使い方を学ぶ機会を広く提供したりすることも有益になる。
課題4.勤務時間を正確に把握できない
紙の出勤簿やタイムカード、ICカードなど、オフィスへの出勤を前提にした勤怠管理なら、何らかの代替手段を検討して、適切な勤怠管理を行う必要がある。比較的短期間で利用を開始できるツールには、利用者の増減に柔軟に対応できるクラウド型の勤怠管理ツールが挙げられる。さまざまなプレゼンス管理機能を提供する関連ツールを導入し、勤怠データの証跡として活用することも考えられる。
課題5.現場の従業員がシャドーITの利用を拡大してしまう
緊急時にITリーダーが運用面での注意事項を従業員に発することで、急場をしのいで利用することも考えられる。また、「テレワーク特需」を受けてベンダーが一定期間のフリートライアルなどのキャンペーンを打っている。IT部門はこうした情報をいち早く押さえ、ツールの利用可否、推奨ツールの提示、利用時の注意点などについて社内に向けて積極的に発信し、シャドーITがやみくもに広がらないように注意を払うことが重要になる。