松岡功の「今週の明言」

日本政府に入り込んだAWSの公共事業の勢いとは

松岡功

2020-04-17 10:20

 本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。

 今回は、アマゾンウェブサービスジャパン 執行役員 パブリックセクター統括本部長の宇佐見潮氏と、日本HP 常務執行役員 デジタルプレス事業本部長の岡戸伸樹氏の発言を紹介する。

「民間と同様に公共の分野もビジネスとして大きく伸ばしていきたい」
(アマゾンウェブサービスジャパン 執行役員 パブリックセクター統括本部長の宇佐見潮氏)

アマゾンウェブサービスジャパン 執行役員 パブリックセクター統括本部長の宇佐見潮氏
アマゾンウェブサービスジャパン 執行役員 パブリックセクター統括本部長の宇佐見潮氏

 アマゾンウェブサービスジャパン(AWSジャパン)が先頃開催したパートナー企業向けの年次イベント「AWS Partner Summit Tokyo」の基調講演の中で、宇佐見氏が公共分野のクラウドビジネス戦略についてスピーチを行った。冒頭の発言はその際に、ビジネス拡大への意気込みを語ったものである。

 宇佐見氏が担当する公共分野は、中央省庁や地方自治体などの「政府」、学校やエドテック企業などの「教育」、そして「非営利組織」といった3つの領域からなる。各領域においてAWSのクラウドサービスを利用しているグローバルでの組織数は、政府が6500以上、教育が1万1000以上、非営利組織が2万1000以上を数えるという。

 同氏によれば、「AWSのサービスは、日本の公共分野でも組織の規模にかかわらず幅広く利用されるようになってきた」とのこと。その大きなきっかけになったのは、政府が2018年6月に、政府関連の情報システムを整備する際にはクラウドサービスの利用を第一候補とする「クラウドバイデフォルト原則」の基本方針を打ち出したからだ。

 ただ、民間の市場では競合他社を大きくリードしているAWSだが、公共市場に本腰を入れたのは、政府が基本方針を打ち出してからだ。むしろ、競合他社に後れをとった印象さえあるが、最近になってAWSが一気に勢いづく話が持ち上がっている。

 というのは、2020年10月に稼働を予定している各省庁横断の基盤情報システム「政府共通プラットフォーム」について、政府がAWSのサービスを採用する意向を示しているからだ。

 そうした追い風もあって、宇佐見氏が率いる公共事業部門は国内市場で一気呵成(かせい)に攻めようという姿勢だ。同氏の冒頭の発言は、まさしくそうした姿勢を表したものである。

 筆者が宇佐見氏のスピーチで興味深かったのは、国内の公共市場におけるAWSサービスの利用動向を示した図をめぐる話だ。図は、左側に記された公共組織ごとのクラウド利用形態の「これまで」と「今後」を端的に表したものである。

国内の公共市場におけるAWSサービスの利用動向
国内の公共市場におけるAWSサービスの利用動向

 例えば、中央省庁ではこれまでウェブサービスや開発環境などにとどまっていた利用形態が、今後は先述した政府情報システム基盤や個別の業務システムに広がるといった具合だ。この図を見るだけでもAWSのサービスの広がりようが十分にうかがえる。

 このところの新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、リモートワークにも柔軟に対応できるクラウドサービスはさらに普及する可能性が高い。AWSの公共部門にとっては単なるビジネスチャンスだけでなく、政府のIT改革の一翼を担うことにもなりそうだ。

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