エストニア発の「Hack The Crisis」とは
新型コロナウイルスは世界を変えた。特に、複数人が一つの空間に集まれないという状況が社会のあらゆる活動を難しくしている。この状況から脱却すべく、欧州では「Hack The Crisis」というムーブメントが起きている。
Hack The Crisisとは、エストニアのハッカソン運営団体や同国の政府、経済団体が中心となって開始したオンラインハッカソンである。新型コロナウイルスが原因で直面している危機に対し、ビジネスや教育など、あらゆる分野で活躍する人材が課題解決に取り組む。
Hack The Crisisの第1回は3月、新型コロナウイルスにより国境を超えた移動が制限されたエストニアで開催された。これには世界中から1000人以上が参加し、30チーム中5チームが同ハッカソン運営者の1組織である「Accelerate Estonia」から5000ユーロの活動資金を獲得。さらに、エストニアのICT貿易大臣のKaimar Karu氏からの支援を取り付けた。
この動きはヨーロッパを中心に中東、南北アメリカ大陸、アフリカ大陸の一部、アジアの一部に広がり、「Hack The Crisis 〇〇」(〇〇には開催地が入る)として、シリーズもののハッカソンとして拡大を続けている。

Hack The Crisisは全プロセスがオンラインで行われるハッカソンだ
なぜデンマークでも必要だったのか
欧州の中では比較的遅く新型コロナウイルスの脅威を経験することになったデンマークでも4月3日から3日間、「Hack The Crisis Copenhagen」がオンラインで開催された。
デンマークで新型コロナウイルスによる最初の死者が出たのは3月14日。以降感染者数は増え続け、4月20日時点で感染者7515人、死者364人に達している。
現在は、国境を超えた移動は制限され、一部学校やレストランが国によって閉鎖された状態だ。さらに、感染拡大を防ぐため、11人以上の集会が禁止され、これに反すると罰金が課される。そのため、デンマーク国内の起業家や各種専門家はコロナウイルスが引き起こす課題を解決したくても、一カ所に集まってコラボレーションできないのだ。
こうした状況下では、オンラインハッカソンは実践可能で現実的な課題解決の方法となる。デンマークでHack The Crisisが開催されたのは自然な流れだといえるだろう。