Zoomが経験したこの四半期は、同社のこれまでの歴史の中で、もっとも大きく成長し、もっとも大きな危機に直面し、もっとも期待が高まった四半期だっただろう。米国時間6月2日には、昨今の「Zoomブーム」が、同社にどんな影響を及ぼしたかが明らかになる。
Zoomは、6月2日に2021会計年度第1四半期の業績発表を行う予定になっている。それを見れば、同社の「ニューノーマル(新たな常態)」の状況をある程度把握することができるはずだ。米国の金融界は、Zoomの第1四半期の売上高を2億250万ドル、非GAAP利益を1株あたり9セントと予想している。同社の2020会計年度の売上高は、6億2270万ドルだった。
3カ月前のZoomは、市場からの期待も今ほどではなく、成長計画ももっと長期的だった。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大によって、わずか数週間ですべてが変わった。
Zoomが前回の業績発表を行った3月4日以降、パンデミックによって世界は劇的に様変わりした。社会はリモートワークに移行し、経済は低迷した。3月4日に発表された第4四半期業績発表のプレスリリースには、新型コロナウイルスに対する言及はない。当時、Zoomの最高経営責任者(CEO)Eric Yuan氏は、顧客が増え、業績は好調だったと述べただけだった。
世界中でロックダウンが実施され、在宅勤務が当たり前になると、Zoomは単なる法人向けビデオコラボレーションプラットフォームの企業から、社名が動詞のようになった数少ない企業の1つになった。「Skypeする」とは言わないし、「Microsoft Teamsする」とも言わない。「Google Meet」や「WebEx」「BlueJeans」「GoToMeeting」などの他のツールを使って会議をするときも、英語圏では「Zoomする」という表現を使うようになっている。Zoomは2019年に上場しており、アップセルとウイルス関連需要、口コミを中心とした市場開拓戦略で事業を拡大する企業になった。Zoomは社会の注目を集め、その後トラブルも起きた。
「Zoomハッピーアワー」や「Zoom誕生会」だけでなく、Zoomを使った病院の診察やZoom葬儀まで登場した。新型コロナウイルスの感染が広がる中、Zoomなどのコラボレーションツールを活用して、家族は連絡を取り続け、教育機関はオンラインで授業を始め、企業は生産性と売上を維持できるかもしれないと気づいた。英国議会でさえZoomを使用している。Zoomは背景画像の設定(グリーンバックを使ったクロマキー合成ほどではなかったが、十分な品質だった)などの、ほかの製品との差別化が可能な機能を素早く投入した。利用が増えるに従って、ユーザーの間では「Zoom疲れ」さえ起こった。