テレワークは「出勤」に劣るのか?
コロナウイルス感染拡大抑制のため、テレワーク導入が急速に進んでいる。しかし、「在宅勤務」の形を取ることが多いテレワークは本当に効率的なのか? 出勤するより効果的なのだろうか?
『成長企業は、なぜOKRを使うのか?』などの著者であり、人事コンサルティングなどを手掛けるプロノイア・グループ(目黒区)の代表取締役であるPiotr Feliks Grzywacz氏(ピョートル・フェリクス・グジバチ)氏は「テレワークが出勤や対面に劣るなんてことはありません」と断言する。
しかし同氏は、テレワークに違和感を覚える人々に一定の理解を示す。
「ウェブ会議で違和感を感じる人がいるのは自然なことです。人間が相手を『人間だ』と認識するためには、声、表情、匂いなどのシグナルが必要です。対面ではこうした無数のシグナルが発信され、受け手も気付かないうちに受信しています。しかし、ウェブ会議ではこうしたシグナルが減少し、相手を『人間だ』と認識しづらくなります。こうして違和感が生まれるのです」(Grzywacz氏)
人を人とも思わない? ウェブ会議の罠
ウェブ会議を利用したことがある人なら、ネットワーク環境などの事情で「顔を出さない参加者」に遭遇したことがあるだろう。また、顔は映っているものの、音声が遅れて聞こえたこともあるだろう。
「顔が見えなかったり、音が遅れて聞こえたりすると、シグナルの受信が阻害され、相手を『人間』として認識しづらくなります。そうなると、相手を『モノ』として認識することになります。相手が人間でないのならば、信頼することは難しいでしょう。そうなると、相手を人間として尊重すること、尊敬することを忘れて『あれは終わったか』『なぜ終わってないんだ』などと、人を人とも思わない、相手をモノ扱いするだけのマネジメントが起きやすくなります。『ウェブ会議の罠』ですね」(Grzywacz氏)
そう話すものの、Grzywacz氏本人はウェブ会議で問題を感じないという。なぜなのか。
「私個人がこうしたシグナルをあまり気にしない性格だというのが最大の理由でしょう(笑)。ですが、やはり今お話ししたような『ウェブ会議の罠』に引っかからないように、『相手をモノ扱いしてはいけない』と肝に銘じることが大切です」(Grzywacz氏)
「出勤至上主義」を終わらせるために必要なもの
コロナウイルス対策としてのテレワーク導入の目的は、会社に社員を集めないことで感染拡大を避けることだ。その結果、社員の通勤が減少した。
これまでは、仮にテレワーク制度を導入していても、肝心の重要情報に社外からアクセスできないといった事情で「出勤しないと仕事ができない」状況が見られた。さらには、「出勤していないということは、仕事をしていないということだ」という前時代の文化を生かし続けた。コロナウイルスはそこからの脱却を企業に迫った。
では、過去の「出勤至上主義」は終わりを告げたのだろうか?