サイボウズが7月20日に開いた記者会見でノンプログラミング開発ツール「kintone」を活用した兵庫県神戸市と大阪府などの取り組みが披露された。
同社は2019年から自治体との協働に注力し、kintoneを活用して各自治体との事業提携を結んでいる。コロナ禍下で神奈川県や大阪府はkintoneをモニタリング基盤として活用し、兵庫県加古川市は特別定額給付金のオンライン申請にkintoneを採用してきた。
同社の営業戦略部 自治体担当 蒲原大輔氏は「kintoneは現場が必要なアプリケーションを現場で作れる。自治体職員が自らシステムを開発する時代に入った」とアピール。同社は7月21日、ワークショップ開催による感染症対策や全庁の業務改善支援を目的に、大阪府と事業連携協定を終結。2020年後半は中央省庁との連携、2021年以降は海外公共市場への事例展開を通じた進出を目指す。
サイボウズ 営業戦略部 自治体担当 蒲原大輔氏
地方自治体が抱える課題は大きい。業務内容は多岐にわたると同時に人口構成の変化に伴って作業量も増加している。
だが、総務省のデータによれば、地方公共団体の総職員数は1994年を頂点に減少し、2019年4月1日時点は約54万人が減少(ただし、対前年比は3793人増)。民間企業は当然のように進んでいる業務効率を高める取り組みが求められている。
しかし、実際の現場は書類の押印やファクスによる情報共有、属人化して保守されなくなったExcelマクロが散乱し、業務改善以前の状況であることは自治体職員の話を聞いても明らかだ。蒲原氏は地方自治体のデジタル化が進まない理由を「戦略的な人事という概念がない」と指摘する。
育成の文脈で見れば、職員を数年ごとに部署異動させる人事慣行が、専門スキルを持った人材育成を阻み、採用の文脈では前述の人事慣行を全逓に人数確保型の採用スタイルを用いるため、専門スキルを持つ人事採用につながらず、民間登用にも非積極的であると蒲原氏は語った。
他方で自ら変革を起こしている自治体も少なくないと説明する。加古川市は職員が独自に特別定額給付金申請をオンライン化する独自フォームをkintoneで作成し、事務処理時間を5分の1へ削減(11万世帯が利用した場合の試算)。
千葉県市川市はサイボウズや両備システムズとともに自治体専用閉域ネットワークのLGWANとkintoneを接続する「R-Cloud Proxy for kintone」を開発し、住民票の取得や駐輪場の申請といった住民サービスをオンライン化している。
岐阜県高山市も「親族の死亡に行う手続きが煩雑」との住民の声に応え、「おくやみ窓口システム」を職員が1カ月で開発。2月14日から15日間の実証実験を経て、市民の待ち時間を約40%削減できるという確証を得た。