一般的に地方自治体のシステム開発はパッケージ導入やスクラッチ開発といった外注、もしくはExcelやAccessのマクロによる内製を用いる。パッケージ導入やスクラッチ開発といった外注は予算と納期、ExcelやAccessのマクロによる内製は機能制限やジョブローテーションによる保守担当者移動の問題が発生する。蒲原氏は「kintoneを用いることで最短1日、低コストで業務アプリケーションを開発できる」とノーコードの利点を強調した。

神戸市 企画調整局情報化戦略部 ICT業務改革担当 デジタル化専門官 宇都宮哲平氏
内製文化を根付かせる戦略を進める神戸市
2019年4月からサイボウズと事業提携を締結した神戸市は、企画調整局・情報化戦略部が全庁のデジタル化を推進し、全庁の業務改善に努めている。神戸市 企画調整局情報化戦略部 ICT業務改革担当 デジタル化専門官 宇都宮哲平氏は「kintoneのアカウントをばらまくだけでは変わらない。内製文化を根付かせる戦略が必要」と延べ、具体的な戦略を説明した。
“やる気のある”革新層や初期採用層とともに成功事例を作り、庁内広報で関心の波を広げる手法を用いているという。
神戸市の保険福祉局保健課は委託先となる歯科衛生士との情報交換にファクスや電話、メールを用いてきたが、この体制をkintoneに置換。ファクスからの書き起こしや郵送が不要になり、転記のダブルチェックや送付先確認といった業務をなくしている。
さらにAccessを用いた情報の課内共有もkintoneに移行させることで、複数職員の同時アクセスによる効率性や保守性を高め、現場からは「大きく楽になった」との声が届いたという。
一連のシステム置換は一部を外注しているが、完全内製事例として公用車の運転日報アプリケーションを披露。神戸市は公用車利用時に記述する日報を紙に記述し、バインダーで管理していたが、アプリケーションに記述した日報をPDFで保管する仕組みに変更。現場や周りからは「紙は簡単に減らせる」との声も上がり、2020年度中に全庁への展開を予定している。
現在、神戸市は361(作成中含む)のkintoneアプリケーションが稼働し、kintoneユーザー数も10人から214人へ拡大(7月9日時点)。神戸市は庁内コミュニティー「KOBE Tech Leaders」を通じて、職員向けのトレーニングや相互交流を促進し、さらなる内製文化の醸成と発展を目指すと語った。