デル・テクノロジーズ(デルとEMCジャパンが合併し、8月1日から発足)は8月4日、「IT投資動向調査2020 追跡調査」を発表した。デルとEMCジャパンは2月に「IT投資動向調査2020」(以下、1月調査)を発表済みだが、コロナ禍で働き方が急激に変化したことを鑑み、従業員100人以上1000人未満の中堅企業約470社の最新動向を追加調査した。中堅企業の約6割がテレワークを実施しているが、約1割の企業はテレワークの継続を断念している。
上席執行役員 広域営業統括本部長 瀧谷貴行氏はコロナ禍の状況にある中堅企業について「従来の仕組みやルールの抜本的な見直しが急務。企業、公共、個人の三位一体でデジタル活用を推進しなければならない」と持論を述べつつ、(1)現状環境の可視化とコストを最適化する「働く環境支援」、(2)不要な出社とリソース不足を最小化する「仕事の仕方支援」、(3)シームレスなコミュニケーションを実現する「コミュニケーション支援」――という3つの支援策の提供を同日から開始した。
デル・テクノロジーズ 上席執行役員 広域営業統括本部長 瀧谷貴行氏
6月8日~7月3日に追跡調査、有効回答社数は約470社、アンケート項目は63。テレワークを実施した企業は63.9%にのぼり、1月調査(25.1%)と比較して38.8ポイント増加した。テレワーク実施時の課題として「押印や印刷のための出社(40.4%)」「請求書や帳票発行のための出社(38.9%)」とペーパーレースに起因する課題がトップにのぼり、続いて「PCやリモートで業務を行うシステム・ツールの導入が不十分(29.6%)」という声が並んだ。
テレワーク実施に伴い、IT担当者はヘルプデスクを含むPCの導入・管理やネットワーク運用・管理に加えて、セキュリティ管理に費やす時間が10%以上増加。一方で外出自粛の影響からか、外部ベンダーとの相談頻度が「減った」「やや減った」と回答した企業は20.9%にのぼった。ITベンダーにおいてもテレワークや訪問自粛が進むことで情報取得の機会が減少しており、IT市場や他社動向など投資検討に必要な情報収集が困難になっている実態を浮き彫りにしている。
「IT投資動向調査2020 追跡調査」のハイライト(出典:デル・テクノロジーズ)
他方でテレワークを継続する企業は54.1%にとどまり、9.8%の中堅企業が継続断念に至った。各企業は「コミュニケーションが難しい、時間がかかる」「チャット・ウェブ会議ツールなどの習熟度に個人差があり、業務の円滑な進行を妨げる」といった課題を挙げており、IT活用能力の隔たりを露呈させた結果といえる。
また、テレワーク実施済み企業でも、VPNなどオフィスへの安全なアクセス環境が準備されていないため、ファイルサーバーなどメール以外の社内システムに接続できていない企業が全体の60.7%を占めた。テレワーク実施時にオフィス出社時と同等の業務を遂行可能にするための投資が行われていない実情を現している。
そのIT予算も経費削減の影響を大きく受け、社内稟議を通すために工夫が必要となった企業は64.9%。具体的には「投資対効果の数値化」「上層部への個別説明」「他社との費用比較」が挙げられた。
今年度の年間IT投資額平均は、1月調査時の1470万円から、今回は1495万円と1%増とほぼ据え置き。内訳を見るとセキュリティ対策費用が198万円(22.9%増)、事業継続計画(BCP)対策費用は105万円(4%減)、BCP策定済み・策定中の企業は45.7%である。