新型コロナウイルス感染症でオンラインへのニーズが急拡大する中、ネットワーク障害の発生が顕著に増加していることが、ネットワーク可視化サービスのThousandEyesのレポートで明らかになった。同社はインターネットサービスプロバイダー(ISP)やパブリッククラウド、コンテンツ配信ネットワーク(CDN)、ドメイン名前解決(DNS)を対象に、新型コロナウイルス感染症がインターネットに及ぼしている影響ついて、1~7月の状況を調査した。
それによると、障害発生数は1月と比較して3月に63%増加し、6月も44%増となるなど期間を通じて障害発生数が上昇した。ISPでは、北米とアジア太平洋地域が3月に最も多く、1月に比べて北米で65%、アジア太平洋地域で99%増加した。ただ、現在は平常値に戻りつつあるという。これに対し欧州・中東・アフリカでは月次で増加し、6月は45%増加している。
アジア太平洋地域での週次(月曜~日曜)のネットワーク障害件数、出典:サウザンドアイズ・ジャパン
ISPでの障害はクラウドよりも多く、調査対象期間中に発生した障害はクラウド事業者の400件強に対し、ISP事業者は4500件強を記録した。障害の80%以上がISPのネットワークで発生し、クラウドは10%未満だった。
日本法人のサウザンドアイズ・ジャパンによれば、日本とアジア太平洋地域の動向としては、企業の営業時間(日本では9~18時)に発生したクラウドでの障害件数の割合が24%で、ビジネスへの影響は軽微だった。新型コロナウイルス感染症の拡大でリモートワークが急増し、外部からのアクセスやVPN接続によるデータセンター経由のアクセスが増えており、日本では自宅の無線LANや低帯域のインターネット接続が原因と思われるトラブルや、VPN装置の性能不足といった問題が認められ、原因が企業側か外部なのか切り分けが難しいケースが多いという。
月次の営業時間内/営業時間外の障害発生状況、出典:サウザンドアイズ・ジャパン
総括して同社は、前例のない状況でネットワーク障害が増えてもインターネットが持ちこたえたと評価する。ネットワークの一時的な停止は、事業者が変化するトラフィック量を調整しようとネットワークに加えた変更に起因するものも多く、事業者が北米で営業時間中にこうした設定変更を行っても、アジア太平洋地域ではその影響を受けることが比較的少なかったようだと分析している。