米Rippleは8月18日、報道機関向けの事業説明会を開催した。同社の事業概要や最新の取り組みである「PayID」の概要などについて、同社 国際事業部門 シニアディレクターの吉川絵美氏が説明した。
Ripple 国際事業部門 シニアディレクターの吉川絵美氏
同氏はまず、同社の事業概要としてブロックチェーンを活用した国際送金ソリューションを紹介。世界で300以上の金融機関に採用されているという。その上で、同社のビジョンを「価値のインターネット(Internet of Value)の実現」だとし、「今日、情報が自由に行き来できるように、お金(価値)も自由に行き来できる世界を実現すること」だと説明した。
続いて、同社の中核技術に位置付けられるブロックチェーンについては、現在さまざまな応用が進められている中、確固たる(国際)送金プラットフォームが確立されることでユースケースを網羅的にサポートすることができるとの認識を示した。続いて、しばしば同一視されるという同社と暗号通貨「XRP」については、同社のソリューションの中でXRPを活用する、いわば“ユーザー”としての立場であるとした。
続いて、同社事業の中心とも言える国際送金について、同氏は背景として「人の動きやビジネスがよりグローバルに」なっている現状を指摘。日本でも労働人口の減少を受けて海外からの労働者(移民)の人口が増加する傾向があり、こうした移民が本国に送金するなどの形で個人や中小企業の国際送金が爆発的に増加しているとした。
一方で、現在銀行間で行われている国際送金は数十年前に作られた仕組みであり、「遅延:決済に3~5日必要」「高コスト:非効率な処理システム」「低い信頼性:高いエラー率、コストの不確実性」といった問題を抱えているという。国際送金のコストに関しては「日本は国際送金のコストが最も高い国の1つ」であり、銀行経由の場合のコストは以前は14%、現在は11%程度にまで下がったというものの、まだまだ高額だという。
この理由として同氏は、従来使われてきたSWIFT送金の仕組みが逐次的な一方向のプロセスであることと、中継のたびに手数料が加算されていく構造になっていることなどを挙げている。例えるなら、従来のSWIFTによるやりとりは手紙のようなもので、片方向のメッセージでプロセスを進めていくため、リアルタイム性に欠ける上に確実に処理されたかどうかの確認もその場ではできないことから信頼性にも劣るという。
一方で、同社が提供する国際送金プラットフォーム「RippleNet」では送金側と受取側の間でリアルタイムのネゴシエーションが行われるため、迅速かつ最小限のコストで処理が可能だという。また、共通通貨としてXRPを活用する「オンデマンド流動性(ODL)」によってさらなる効率化も実現できるという。ブロックチェーンを活用した暗号通貨(暗号資産)としてはBTC(ビットコイン)などがよく知られているが、同社がXRPを活用する理由はXRPが送金決済に適した特徴を持つためだという。
同社では、グローバルな事業戦略として「定額・高頻度の国際送金分野にフォーカス」「インフラパートナーとして金融機関を支援」「オンデマンド流動性(ODL)の普及に注力」の3点を掲げる。日本国内でもほぼ同様で、「急増する移民送金のニーズに対応」「国内外の送金の一元化」に取り組んでいくという。
また、同社の最新の取り組みとして米国で6月に発表された「PayID」についても説明があった。PayIDは「送金方式の標準化を目指す、Open Payments Coalitionが開発・支援する『送金用のユニバーサルID』」であり、「オープンソース」「人間が読みやすいアドレス」「全ての通貨、決済ネットワークに対応可能」という特徴がある。
ユーザーIDの標準フォーマットとして広く利用されるようになった“Eメールアドレス”を意識しており、「user$domain.com」という形式で送金先を指定できるようにするというもの。現在はさまざまな形式のアドレスが混在しており、処理が煩雑だという問題を解消することを意図している。RippleNetのような低コストで迅速に送金処理が可能なプラットフォームとPayIDを組み合わせることで、送金、さらにはインターネットを通じたさまざまな“価値”の交換がより容易に行えるようになるものと期待される。