ITリーダーが自らの履歴書を最新のものに更新しようと考えるような、胸躍る役職の募集が新たに開始された。英国が8月末、政府最高デジタル責任者(GCDO)を募集したのだ。内閣府の最高レベルで、同国における公共サービスのデジタル変革を指揮するといった責任を引き受けることになり、20万ポンド(約2700万円)という年俸を手にできる。
この仕事は政府のテクノロジー分野で最大規模のものであるため、その職務内容を読んだだけでテクノロジー魂を燃え上がらせ、GCDOを目指す気になった、極めて能力の高い応募者からの書類が内閣府の採用担当者のもとに押し寄せてきていると考える人もいるだろう。
しかし実際のところ、GCDOの座は不思議なことに1年近くも空位のままなのだ。
内閣府の行政事務担当最高執行責任者(COO)Alex Chisholm氏は、今回の新たな募集を発表した際、「われわれは2019年秋に同様の役職で候補者を探した」と認めた。そして事実、政府最高デジタル情報責任者(GCDIO)という、少し異なった名称ながらほぼ同じ責務を有する役職の募集が昨秋に開始されていた。
いずれの役職でも、就任した暁には「世界で最もデジタル化が進んだ政府としての英国政府の評判をさらに高める」ことが求められる。これには、英内閣府の一部門として政府のデジタル変革に専念する政府デジタルサービス(GDS)を率いるという仕事や、総勢1万8000人に及ぶデジタル/データ/テクノロジー関連の職業部門(DDaT)の先頭に立つという仕事が含まれる。
2019年に募集されたGCDIOの最終面接は、同年11月末に実施される予定だった。当時の内閣府大臣Oliver Dowden氏は募集が最初に発表された際、適任者探しは「進行中」であり、選考に残った候補者についての情報を「近いうちに」明らかにすると力説していた。
そして1年近くがたった今、役職の頭字語が1文字減っただけで、政府は依然として適任者を探している。
公共サービスのデジタル化という、とてつもない規模の作業を調整する最高幹部を任命できていない状況は、政府のお題目と食い違っている。英国政府は3年前に、新たなデジタル戦略の中で、公共サービスの効率を向上させるためにデジタル化の可能性を足がかかりにするという目標を掲げ、「プラットフォームとしての政府」を構築する必要性についてあらためて表明していた。
その目標は、政府全体で「デジタルでの処理を前提」にできるようにするとともに、テクノロジーやデータを活用して、より容易で、シンプルかつ安価なかたちのデジタル化された公的サービスによって市民によりよく奉仕するというものだった。