富士通の全社DX(デジタルトランスフォーメーション)プロジェクトがいよいよ動き出した。ただ、発表会見を聞いて気になることがあった。プロジェクトに必須の明確な目標、いわば「分かりやすい旗」が見て取れなかったのだ。大きなプロジェクトほど、それが必要なのではないか。
全社DXプロジェクトへ1000億円超を投資
富士通が10月5日、デジタル時代の競争力強化を目的として、製品やサービス、ビジネスモデルに加えて、業務プロセスや組織、企業文化/風土を変革する全社DXプロジェクト「Fujitsu Transformation(通称:フジトラ)」を7月に立ち上げ、この10月より本格始動したと発表した。
このプロジェクトは、オンライン形式で発表会見を行った代表取締役社長兼CDXO(最高DX責任者)の時田隆仁氏と、この4月にSAPジャパンから移籍した執行役員常務 CIO(最高情報責任者)兼CDXO補佐の福田譲氏のリーダーシップのもと、部門/グループ/リージョン横断で富士通グループの変革に取り組むものである(写真1)。
オンライン形式での会見に臨む富士通 代表取締役社長兼CDXOの時田隆仁氏と、執行役員常務 CIO兼CDXO補佐の福田譲氏
変革の対象は、新事業の創出から、戦略事業の成長、既存事業の収益性強化、さまざまなプロセスの標準化/効率化、人事制度や働く環境まで、経営/現場の重要課題であり、これらを顧客や従業員などの声を取り入れながら、デザイン思考やアジャイルなどのフレームワークを活用し解決していく構えだ。
同社では、2022年度までをひと一区切りとしたこのプロジェクトへ1000億円超の投資を行って自身の変革を進めるとともに、今後、その成果やノウハウをソリューションやサービスなどに反映し、顧客のDXパートナーとして、デジタルテクノロジーを活用した社会課題の解決に貢献していく構えだ。
会見で説明があったこのプロジェクトの内容については関連記事をご覧いただくとして、ここではこのプロジェクトに向けた時田氏の次の発言が印象深かったので記しておこう。
「われわれは、富士通がお客さまや社会のDXを支える企業となるべく、自らのDXに取り組んでいる。富士通自身が変革し、そしてその姿をお客さまや社会に示し、リファレンスとなることで社会に貢献していく。それが私の考えであり、富士通の従業員全員の願いでもある。この願いを達成するために私自身がCDXOを名乗り、富士通の変革を成し遂げていく決意である」